ケアマネ実務研修は仕事しながら受けられるか。87時間と実習の乗り切り方を解説
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
ケアマネ試験に合格したあと、多くの人がぶつかるのが実務研修との両立です。87時間以上の講義・演習に加え、事業所での実習も3日間以上あります。平日日中の日程が組まれることが多く、働きながらの受講には調整が欠かせません。研修の構成と負担が集中する箇所を公的資料で確認し、現実的な進め方を整理します。
両立を考える前に研修の全体像を知る
調整の相談をする前に、何がどれだけあるのかを正確に把握しましょう。負担が読めなければ、勤務先とも話ができません。
87時間は前期47時間・後期40時間
実務研修は87時間以上です。厚生労働省が示すガイドラインの科目別時間数では、前期は16科目、後期は12科目で構成され、ガイドラインの科目別時間数を合計すると前期47時間・後期40時間という構成になっています。
1日あたり6時間程度の日程で組まれるとすれば、単純計算で15日前後の受講が必要になります。しかも連続ではなく、数か月にわたって断続的に設定されるのが一般的です。年次有給休暇の残日数と照らして、早い段階で見通しを立てる必要があります。
出典:厚生労働省「別冊1 介護支援専門員実務研修 各科目のガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/content/001089251.pdf
前期 → 実習 → 後期という順序
研修は3つの段階に分かれます。前期の講義・演習を受けたのち、事業所での実習を挟み、後期の講義・演習に進む流れです。実習は前期日程の終了日から後期日程の開始日までの期間に行われます。
後期の最初の科目が「実習振り返り」(3時間)となっていることからも、実習を挟む前提で設計されていることが分かります。前期だけ、後期だけを別の年に受けるといった分割はできません。
出典:厚生労働省「別冊1 介護支援専門員実務研修 各科目のガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/content/001089251.pdf
/ 宮城県「介護支援専門員研修 実務研修」https://www.pref.miyagi.jp/site/keamane/zitumukensyu.html
合格発表から研修開始までの期間は短い
日程の感覚も押さえておきましょう。第29回試験は2026年10月11日実施で、東京都の合格発表は令和8年11月24日(火)が予定されています。研修はその後に始まります。
合格が分かってからシフトの調整を始めると、初回の日程に間に合わないことがあります。自己採点で手応えがあった段階で、勤務先に打診しておくのが現実的です。
出典:公益財団法人東京都福祉保健財団「令和8年度 東京都介護支援専門員実務研修受講試験」
https://www.keamane.tokyo.jp/shiken/
最大の関門は実習の3日間
講義は日程が事前に分かるため計画できます。読みにくいのは実習です。ここが両立の成否を分けます。
実習は3日間以上、連続でなくてもよい
実習は「ケアマネジメントの基礎技術に関する実習」という科目です。期間は前期日程の終了日から後期日程の開始日までの間で3日間以上とされ、必ずしも3日間連続で実施する必要はないとされています。
連続でなくてよいという点は、働きながら受講する人にとって重要です。1日ずつ分けて休みを取れば、まとまった長期休暇を確保する必要はありません。ただし実習先の都合もあるため、早めの日程調整が前提になります。
出典:宮城県「介護支援専門員研修 実務研修」https://www.pref.miyagi.jp/site/keamane/zitumukensyu.html
実習先は自分では選べない
日程が読みにくい理由がここにあります。宮城県の案内では、協力事業所は特定事業所加算を取得または取得を予定しており、かつ知事が適当と認める居宅介護支援事業所とされ、実習指導者は主任介護支援専門員とされています。
自分の勤務先が実習先になるとは限らず、研修実施機関から割り当てられます。さらに実習では利用者への居宅訪問を行うため、実習協力者となる利用者の体調や生活状況にも日程が左右されます。「この日に休みを取る」と先に決められない構造だと理解しておいてください。
出典:宮城県「介護支援専門員研修 実務研修」https://www.pref.miyagi.jp/site/keamane/zitumukensyu.html
実習には報告書の作成も含まれる
拘束されるのは実習当日だけではありません。ガイドラインでは、ケアマネジメントプロセスの実践にあたっての留意点を踏まえ観察した結果を盛り込んだ実習報告書の作成や、実際の生活環境を観察した結果を盛り込んだ報告書の作成ができることが修得目標として挙げられています。
また実習にあたっては、実習協力者との誓約書および同意書の取り交わしが必要とされ、個人情報の取り扱いと守秘義務についても事前の確認が求められます。実習日以外にも準備と記録の時間が必要になる点を、計画に織り込んでください。
出典:厚生労働省「別冊1 介護支援専門員実務研修 各科目のガイドライン」https://www.mhlw.go.jp/content/001089251.pdf
勤務先にどう相談するか
両立は個人の努力だけでは成立しません。制度上、事業者にも責任が定められている点を知っておくと、話がしやすくなります。
事業者には研修機会を確保する義務がある
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)第19条第3項は、指定居宅介護支援事業者は介護支援専門員の資質の向上のために、その研修の機会を確保しなければならないと定めています。
現在ケアマネ以外の職種で働いている人には直接適用されない規定ですが、居宅介護支援事業所を持つ法人であれば、この考え方は共有されているはずです。「個人の都合」ではなく「専門職の育成」として相談する材料になります。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」
https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
法改正で事業者の義務はさらに強まる
この流れは強化される方向です。2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)では、条例により介護支援専門員を置かなければならないとされている事業者・施設の開設者に対し、雇用する介護支援専門員の資質の保持・向上のため、研修の受講機会を確保する措置をとる義務が新設されました。
これを行っていないと認められる場合は勧告の対象となり、期限内に従わなければその旨を公表することができるとされています。研修に行かせない事業所は、制度上も問題を抱えることになります。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
費用面の支援も確認する
相談の際は、日程と同時に費用も議題に載せてください。実務研修の受講料は都道府県ごとに定められており、たとえば福島県では研修実施機関へ受講申込をして内定通知が届いた人が研修手数料を県に納入する仕組みです。
また都道府県によっては、実務研修が教育訓練給付の対象となっている場合があります。神奈川県では県の実務研修が「特定一般教育訓練」の講座指定を受けており、要件を満たせば受講費用の一部が修了後に支給されます。ただし受講開始1か月前までに訓練前キャリアコンサルティングを受ける必要があるため、確認は早めに行ってください。
出典:福島県「介護支援専門員関係」https://www.pref.fukushima.lg.jp/sec/21025d/kaigosien-syuninkousin.html / 神奈川県「介護支援専門員実務研修受講試験及び介護支援専門員実務研修について」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n7j/cnt/f3721/p553169.html
修了後の流れまで見通しておく
研修を終えれば完了ではありません。働き始めるまでの手続きも含めて計画すると、転職のタイミングも設計できます。
登録は修了後3か月以内
実務研修受講試験に合格し、かつ実務研修の課程を修了した人は、当該実務研修を行った都道府県知事に対する登録申請を、実務研修修了後3か月以内に行う必要があります。
期限があるため、研修終了後に気を抜くと手続きが滞ります。修了予定日から逆算して、必要書類を先に確認しておいてください。
出典:千葉県「介護支援専門員資格をお持ちの方へ」https://www.pref.chiba.lg.jp/koufuku/kaigohoken/senmonin/kaigoshien/index.html
証が届くまで1か月から1か月半
登録に続いて、介護支援専門員証の交付を受けてはじめて実務に就けます。神奈川県の案内では、交付申請から証が手元に届くまで1か月から1か月半程度を要するとされています。
つまり研修修了の翌日からケアマネとして働けるわけではありません。転職を予定している場合は、この期間を見込んで入職日を調整する必要があります。
出典:神奈川県「介護支援専門員の研修情報」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n7j/cnt/f3721/p1091762.html
研修は原則として登録都道府県で受ける
最後に注意点です。神奈川県の案内では、原則として研修は登録都道府県で受講しなければならないとされています。やむを得ない事情で登録都道府県以外で受講する場合は受講地変更の手続きが必要で、届出を行わないと研修の受講が無効となる場合があるとされています。
研修期間中に転居や転勤の可能性がある人は、この点を事前に確認しておいてください。手続きを怠ると、受けた研修が無駄になりかねません。
出典:神奈川県「介護支援専門員の研修情報」https://www.pref.kanagawa.jp/docs/n7j/cnt/f3721/p1091762.html
ケアマネ実務研修と仕事の両立についてよくある質問
働きながら受講する人から多い疑問をまとめました。
実務研修は働きながら受けられますか?
受けられますが、調整は必要です。87時間以上の講義・演習に加えて3日間以上の実習があり、平日日中の日程が組まれることが多いためです。
研修は何日くらい通うことになりますか?
時間数は前期47時間、後期40時間の合計87時間です。1日あたり6時間程度で組まれるとすれば15日前後になりますが、実際の日程は都道府県ごとに設定されます。
実習は連続して休みを取る必要がありますか?
ありません。実習は3日間以上とされていますが、必ずしも連続で実施する必要はないとされています。ただし実習先や実習協力者の都合にも左右されます。
実習先は自分の職場でもよいですか?
研修実施機関から割り当てられます。協力事業所は特定事業所加算を取得または取得予定で知事が適当と認める居宅介護支援事業所とされ、実習指導者は主任介護支援専門員とされています。
前期だけ受けて後期は翌年にできますか?
できません。前期・実習・後期は一連の課程として設計されており、後期の冒頭には実習振り返りの科目が置かれています。
職場が研修に行かせてくれない場合は?
2026年6月公布の法律により、事業者には雇用する介護支援専門員の研修受講機会を確保する措置をとる義務が新設され、怠れば勧告や公表の対象となります。制度の趣旨を踏まえて相談してください。
ケアマネ実務研修と仕事の両立についてのまとめ
実務研修は87時間以上で、前期47時間・後期40時間の構成に加えて3日間以上の実習があります。実習は連続でなくてもよい一方、実習先や利用者の都合で日程が動くため読みにくい部分です。合格発表から研修開始までの期間は短いので、自己採点の段階で勤務先に打診しておくのが現実的です。研修修了後も登録と証の交付に1か月以上かかる点まで見込んでおきましょう。もっておきましょう。ろから始めましょう。

