特養のケアマネは何をする?施設サービス計画の作り方と、居宅ケアマネとの違い
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
特別養護老人ホーム(特養)にも、入所者のケアプランを作るケアマネジャーが配置されています。居宅介護支援事業所のケアマネとは、担当する人の状態も、仕事の進め方も大きく異なります。施設のケアマネとして働くことを考えている人や、居宅から施設への転職を検討している人にとって、その違いを知っておくことは大切です。本記事では、特養のケアマネの配置基準と仕事内容、居宅ケアマネや生活相談員との違い、働くうえでのやりがいと注意点を整理します。
特養のケアマネとは
まずは、特養という施設の特徴と、そこでケアマネがどんな立場で配置されているのかを確認します。
特養は要介護3以上の人が暮らす施設
特別養護老人ホーム(介護老人福祉施設)は、常に介護が必要で、自宅での生活が難しい人が入所する施設です。新規に入所できるのは、原則として要介護3以上の人です。
出典:滋賀県「特別養護老人ホーム入所ガイドライン」 https://www.pref.shiga.lg.jp/ed00/4526.html
入所者の多くは重度の介護や認知症のケアを必要としており、最期まで施設で暮らす人も少なくありません。
入所者100人に1人を標準に配置される
特養には、常勤のケアマネを1人以上配置することになっています。人数の目安は、入所者100人またはその端数を増すごとに1人を標準とすることとされています。
出典:内閣府地方創生推進事務局「介護老人福祉施設の施設基準」 https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/151002shiryou05-01.pdf
施設で入所者のケアプランを担当するケアマネは、「計画担当介護支援専門員」と呼ばれます。
特養で働くケアマネの人数
厚生労働省の調査では、2024年10月時点で介護老人福祉施設に従事するケアマネは1万4,156人でした。居宅介護支援、グループホームに次いで多くのケアマネが働く職場です。
出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回 資料6 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
特養のケアマネの仕事内容
特養のケアマネの中心となる仕事は、入所者一人ひとりの施設サービス計画の作成です。入所から退所まで、さまざまな場面で関わります。
施設サービス計画を作る
特養のケアマネは、入所者の心身の状態や生活歴、本人や家族の希望を把握するアセスメントを行い、施設サービス計画を作成します。計画は、介護職員、看護職員、管理栄養士、機能訓練指導員など、施設内の多職種と話し合って内容を決め、入所者や家族の同意を得て交付します。
居宅のケアプランが外部の事業所のサービスを組み合わせるのに対し、施設サービス計画は、施設のなかで提供される介護や看護、食事、リハビリをどう組み合わせるかを考えるのが特徴です。
入所の受け入れと入所判定への関わり
特養への入所は、申し込み順ではなく、介護の必要度や家族の状況などをもとに、施設の入所検討委員会などで優先度を判断して決められます。ケアマネは、入所を待つ人の情報を把握し、入所が決まった人について、自宅や病院、居宅のケアマネから情報を引き継ぐ役割を担います。
入所直後は環境の変化で体調や気持ちが不安定になりやすいため、最初の計画は短い期間で見直すことが大切です。
ユニット型と従来型で関わり方が変わる
特養には、少人数のグループごとに生活の場をつくる「ユニット型」と、多床室を中心とした「従来型」があります。ユニット型では、ユニットごとに決まった職員が入所者を担当するため、ケアマネはユニットの職員と一人ひとりの暮らし方を細かく話し合いながら計画を作ります。従来型では、施設全体の日課のなかで、どう個別の希望を実現するかを工夫することが求められます。働く施設がどちらの形かによって、計画づくりの進め方も変わります。
モニタリングと看取りの計画
計画を作った後は、定期的に入所者と面接し、計画が入所者の状態に合っているかを確認します。状態が変わったときは、多職種で話し合って計画を見直します。
特養では、人生の最終段階を施設で迎える入所者も多く、看取りに向けた計画づくりもケアマネの大切な仕事です。本人や家族がどこでどのように最期を迎えたいかを、元気なうちから少しずつ聴き取り、医師や看護職員と連携して、本人の意思に沿った支援につなげます。
居宅ケアマネ・生活相談員との違い
同じ特養で働く職種のなかでも、ケアマネと生活相談員は役割が近く、混同されがちです。居宅ケアマネとの違いとあわせて整理します。
居宅ケアマネとの違い
居宅ケアマネは、自宅で暮らす利用者を訪問し、複数のサービス事業所と調整しながらケアプランを作ります。毎月の給付管理や、事業所との連絡が業務の大きな部分を占めます。
特養のケアマネは、同じ施設で暮らす入所者を担当するため、訪問の移動や外部事業所との給付管理はありません。その分、入所者の日々の様子を直接見ながら、施設内の多職種と密に連携して計画を作れるのが特徴です。一方、担当する人数は居宅より多くなることが一般的です。
生活相談員との違い
特養には、ケアマネとは別に、入所者100人ごとに1人以上の生活相談員を置くことになっています。
出典:内閣府地方創生推進事務局「介護老人福祉施設の施設基準」 https://www.chisou.go.jp/tiiki/kokusentoc_wg/hearing_s/151002shiryou05-01.pdf
生活相談員は、入所の相談や契約の手続き、家族との窓口、行政や地域との連絡調整などを主に担います。ケアマネは、入所後の生活をどう支えるかという計画づくりを担います。施設によっては、ケアマネと生活相談員を一人が兼務していることもあります。
兼務の働き方が多い
特養のケアマネは、生活相談員や介護職員と兼務している場合も少なくありません。介護職員と兼務する場合は、計画作成の時間を確保しにくくなることもあります。求人を見るときは、ケアマネ専任か兼務か、兼務の場合は業務の割合がどのくらいかを確認しましょう。
特養でケアマネとして働くやりがいと注意点
最後に、特養でケアマネとして働くことを考えている人に向けて、やりがいと注意点を紹介します。
入所者の暮らしを長く見守れる
特養のケアマネは、入所者の日々の生活を間近で見守りながら、何年にもわたって関わることができます。施設の多職種と一緒に、一人ひとりがその人らしく暮らせる工夫を考え、看取りまで寄り添えることは、施設ケアマネならではのやりがいです。
医療的なケアの知識が求められる
入所者の多くは重度の介護を必要とし、持病を抱えている人も多いため、医療的なケアや看取りに関する知識が欠かせません。看護職員や配置医師との連携の方法を早めに身につけておくと、計画づくりに自信が持てるようになります。
家族との関係づくりも大切な仕事
入所者の家族の多くは、自宅で介護を続けられなかったことに複雑な思いを抱えています。面会や計画の見直しの機会に、入所者の様子を丁寧に伝え、家族の思いを聴くことで、家族も一緒に入所者を支えるチームの一員になってもらえます。看取りの時期には、家族が後悔のない時間を過ごせるよう支えることも、ケアマネの大切な役割です。
担当人数と記録の多さに備える
担当する入所者の人数が多いため、計画の作成や見直し、記録の作業が重なる時期があります。介護記録システムなどのICTが導入されているか、多職種とどのように情報を共有しているかを確認しておくと、働き始めてからの負担を予測しやすくなります。
特養のケアマネについてのよくある質問
Q. 特養のケアマネは何人の入所者を担当しますか?
A. 人員基準は入所者100人に1人を標準としています。実際の担当人数は施設の規模やケアマネの人数によって異なるため、求人で確認しましょう。
Q. 特養のケアマネに夜勤はありますか?
A. ケアマネ専任であれば、日勤が基本です。ただし介護職員と兼務している場合は、夜勤のシフトに入ることがあります。
Q. 特養のケアマネは未経験でも働けますか?
A. 働けます。入所者の様子を毎日見ながら計画づくりに慣れていけるため、ケアマネとしての最初の職場に選ぶ人もいます。介護職として特養で働いた経験がある人は、その経験を活かせます。
Q. 特養のケアマネと居宅のケアマネはどちらが大変ですか?
A. 大変さの種類が異なります。居宅は訪問や外部との調整、給付管理が多く、特養は担当人数の多さや医療的なケア、看取りへの対応が求められます。自分の得意なことや生活に合わせて選びましょう。
Q. 特養から居宅のケアマネに転職できますか?
A. できます。施設で多職種と連携してきた経験は、居宅でも活かせます。ただし給付管理や外部事業所との調整など、居宅ならではの業務を新たに覚える必要があります。
特養のケアマネについてのまとめ
特養のケアマネは、要介護3以上の人が暮らす施設で、入所者一人ひとりの施設サービス計画を作ります。入所者100人に1人を標準に配置され、施設内の多職種と連携しながら、入所から看取りまで関わります。給付管理や訪問の移動がない一方で、担当人数の多さや医療的なケアへの対応が求められます。兼務の有無も確認して、自分に合った働き方を選びましょう。

