ケアマネ実務研修のグループワークでは何をする?初対面でも発言に困らない準備と乗り切り方
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
ケアマネ試験に合格した後、多くの人が不安に感じるのが実務研修のグループワークです。「初対面の人の前で発言できるか」「看護師や社会福祉士と同じグループで話についていけるか」と心配になる方も少なくありません。この記事では、実務研修でグループワークが多い理由、扱われる主なテーマ、困りやすい場面の対処法、研修期間を乗り切るための準備を順番に解説します。
実務研修でグループワークが多い理由
実務研修は、講義を聞くだけの研修ではありません。グループでの演習が多く組み込まれているのには、研修の目的と2024年度からのカリキュラムの考え方が関係しています。まずは研修の全体像を確認しましょう。
実務研修は87時間以上の講義・演習と実習で構成される
介護支援専門員実務研修は、講義・演習と、居宅介護支援事業所などでの実習で構成されています。茨城県の令和8年度の日程一覧では、実務研修は17日間程度(87時間以上)で、オンライン研修(一部参集班あり)として実施される予定です。 (出典:茨城県「令和8年度 介護支援専門員各種研修等日程一覧(予定)」https://www.pref.ibaraki.jp/hokenfukushi/chiiki/ninchi/documents/r8nittei_0611.pdf )
研修は前期と後期に分けて行われることが多く、その間に実習が入るのが一般的な流れです。
2024年度から新しいカリキュラムで実施されている
介護支援専門員の法定研修は、実務研修を含むすべての研修課程で、2024年度から新カリキュラムが施行されています。 (出典:香川県「介護支援専門員等の養成・更新研修(法定研修)」https://www.pref.kagawa.lg.jp/content/etc/subsite/choju/caremane/index.shtml )
新カリキュラムでは、「地域共生社会の実現に向けた地域包括ケアシステムの深化」などの科目名が用いられ、地域や多職種との連携を意識した内容になっています。
演習形式が多いのは多職種で考える力を身につけるため
ケアマネジャーの仕事は、医療職や介護職、行政、家族など立場の異なる人の意見をまとめ、1つのケアプランにしていくことです。実務研修のグループワークは、さまざまな職種の受講者と同じ事例を検討することで、この「異なる視点をまとめる力」を実際に体験する場になっています。発言の上手さを評価する場ではなく、考え方の違いに触れる場だと捉えると、気持ちが楽になります。
研修の修了から登録までの流れ
実務研修を修了すると、都道府県への介護支援専門員の登録申請を経て、介護支援専門員証の交付を受けることで、ケアマネとして業務に従事できるようになります。つまり、グループワークを含む実務研修は、試験に合格した人がケアマネとして働き始めるための最後の関門です。なお、2026年6月に公布された法改正で資格更新の仕組みは廃止されますが、ケアマネになるための実務研修は引き続き必要です。演習で身につけた進め方は、登録後すぐに担当する利用者のケアマネジメントで使うことになります。
グループワークで扱われる主なテーマ
グループワークの内容は研修実施機関によって異なりますが、ケアマネジメントの流れに沿った演習が中心です。ここでは、多くの研修で扱われる代表的なテーマを、ケアマネジメントのプロセスの順に紹介します。
アセスメントと課題の整理
架空の事例をもとに、利用者の心身の状態や生活環境、家族の状況などを読み取り、生活上の課題を整理する演習です。同じ事例を読んでも、看護職は疾患のリスク、介護職は日常生活動作、相談職は家族関係に目が向くなど、職種によって着目点が異なることを実感しやすいテーマです。家族構成を図で表すジェノグラムや、利用者を取り巻く人や機関の関係を図で表すエコマップをグループで作成し、情報を整理する演習が組み込まれることもあります。
居宅サービス計画の作成
アセスメントで整理した課題をもとに、グループで目標やサービス内容を考え、居宅サービス計画を作成します。実務研修のカリキュラムでも、居宅サービス計画の作成は集合研修での演習として位置づけられています。
サービス担当者会議のロールプレイ
受講者が利用者、家族、ケアマネ、サービス事業所の担当者などの役を演じ、サービス担当者会議を模擬的に行います。限られた時間で参加者の意見を引き出し、合意に導く進め方を体験する演習で、実際の会議の進行役を務める前の練習の場になります。
モニタリング・評価と実習の振り返り
ケアプランの実施状況を確認し、目標の達成度を評価する演習や、実習で経験したことをグループで共有する振り返りも行われます。実習先で感じた疑問や戸惑いを言葉にすることで、ほかの受講者の経験からも学べる時間です。
グループワークで困りやすい場面と対処法
グループワークへの不安の多くは、事前に「こうなったらこうする」と決めておくことで和らぎます。ここでは、受講者が困りやすい場面ごとに、実践しやすい対処法を紹介します。
うまく発言できないとき
最初から自分の意見を完璧にまとめる必要はありません。「〇〇さんの意見に加えて」「事例のこの一文が気になりました」など、ほかの人の発言や資料の一部を足がかりにすると話し始めやすくなります。自分の職種で普段見ている視点から一言添えるだけでも、グループにとっては貴重な材料になります。
職種の違いで意見が分かれたとき
医療職と介護職で意見が分かれるのは、グループワークではむしろ自然なことです。どちらが正しいかを決めるのではなく、「利用者本人がどうしたいと言っているか」に立ち返ると、議論が前に進みやすくなります。この進め方は、実際のサービス担当者会議でもそのまま役立ちます。
司会・書記・発表の役割を任されたとき
役割は、自分から早めに引き受けたほうが負担が少ないこともあります。書記はメモを取りながら議論を追えるため、発言が苦手な人にも向いています。司会を任された場合は、時間配分を最初に全員で確認し、全員に一度は発言してもらうことを意識するだけで十分に役割を果たせます。
時間内に意見がまとまらないとき
演習の時間は限られているため、議論が広がりすぎて結論が出ないこともあります。そのようなときは、残り時間を確認したうえで「今日の結論」と「意見が分かれた点」を分けて整理し、発表では両方をそのまま伝えれば問題ありません。講師やファシリテーターは、結論の正しさよりも、どのような視点で話し合ったかを重視していることが多いため、意見が分かれた理由を説明できれば十分な発表になります。
オンラインで演習が行われるとき
前述の茨城県の例のように、研修をオンラインで実施する研修機関もあります。オンラインでは発言のタイミングがつかみにくいため、発言前に名前を名乗る、カメラをオンにして表情で反応するなどの工夫が有効です。通信環境やイヤホンは、研修初日までに一度テストしておきましょう。
研修期間を乗り切るための準備
実務研修は、仕事を続けながら受講する人がほとんどです。グループワークに落ち着いて臨むためにも、内容面の予習と、仕事や家庭との調整を研修が始まる前に進めておくことが大切です。
テキストと事前課題に早めに目を通す
研修で使うテキストや事前課題が届いたら、グループワークで扱う章だけでも先に読んでおきましょう。事前課題が出される場合は、完成度より期限内に提出することを優先してください。わからない部分は「ここがわからなかった」とメモしておくと、グループワークでの発言材料になります。
自分の職種の強みと弱みを整理しておく
これまでの職種で得意だった視点と、あまり触れてこなかった分野を書き出しておくと、グループワークでの役割が見えてきます。苦手な分野は他職種の受講者から学べる機会でもあるため、遠慮なく質問しましょう。
職場と家族に日程を早めに共有する
研修日は平日に組まれることが多く、仕事の調整が必要になります。日程表が届いたらすぐに職場へ共有し、休みの取り方を相談しておきましょう。研修後に事前課題や振り返りに取り組む時間も必要になるため、家族にも研修期間中の予定を伝えておくと安心です。
受講料と交通費の負担を確認しておく
実務研修の受講料は都道府県や研修実施機関によって異なります。前述の茨城県の令和8年度の日程一覧では、実務研修の受講料は62,000円(予定)とされています。
これに加えて、集合研修の会場や実習先までの交通費もかかります。勤務先に研修費用の補助制度があるか、研修日を出勤扱いにできるかを事前に確認しておくと、研修期間中の負担を見通しやすくなります。
研修修了後の働き方も考えておく
研修を修了し、介護支援専門員として登録されると、ケアマネとして働けるようになります。ただし、今の職場にケアマネとして働ける枠があるとは限りません。研修期間中から、修了後にどこでどのように働くかを考えておくと、修了後の動き出しに迷わずに済みます。
ケアマネ実務研修のグループワークについてのよくある質問
Q. グループワークで発言が少ないと修了できないのでしょうか?
発言の回数だけで修了の可否が決まるわけではありません。研修では理解度を確認する修了評価が行われますが、大切なのは演習に主体的に参加する姿勢です。聞き役や書記として議論に貢献することも、立派な参加の形です。
Q. グループのメンバーはどのように決まりますか?
研修実施機関がグループを編成するのが一般的で、看護師、介護福祉士、社会福祉士など異なる職種の受講者が同じグループになるよう配慮されることが多くあります。
Q. 介護福祉士出身だと医療の話についていけないのではと不安です。
心配はいりません。グループワークは職種ごとの視点の違いを学ぶ場なので、医療の知識が少ないことは問題ではありません。生活場面での気づきは介護職ならではの強みとして、議論に役立ちます。
Q. 事前課題の事例は自分で探す必要がありますか?
研修実施機関によって異なります。架空の事例が配布される場合もあれば、自分が関わった事例をもとに作成する場合もあります。個人情報の扱いを含め、必ず配布された要項の指示に従ってください。
Q. グループワークの内容は研修機関によって違いますか?
研修時間の基準は国が定めていますが、日程や演習の進め方は都道府県や研修実施機関によって異なります。詳しくは、受講地の都道府県や研修実施機関の案内を確認しましょう。
ケアマネ実務研修のグループワークについてのまとめ
ケアマネ実務研修のグループワークは、アセスメント、ケアプラン作成、サービス担当者会議のロールプレイなど、ケアマネジメントの流れに沿って行われます。多職種で意見が分かれるのは自然なことで、利用者本人の意向に立ち返れば議論は前に進みます。テキストの予習と職場・家族との日程調整を早めに済ませ、研修修了後の働き方まで見据えて臨みましょう。

