居宅介護支援の特定事業所加算とは?4区分の要件と単位数、ケアマネの働き方への影響
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
特定事業所加算は、質の高いケアマネジメントを行う体制を整えた居宅介護支援事業所を評価する加算です。算定には主任ケアマネの配置や24時間の連絡体制など多くの要件があり、区分によって求められる体制も大きく違います。本記事では、4つの区分の単位数と要件、2024年度改定での見直し、実際の算定状況、そしてこの加算がケアマネの働き方にどう関わるのかまでを、厚生労働省の資料をもとに整理します。
特定事業所加算とは
まずは、特定事業所加算がどんな目的の加算で、どんな区分があるのかを確認します。全体像を押さえておくと、自分の事業所がどの区分を目指せるのかが判断しやすくなります。
質の高い体制を評価する加算
特定事業所加算は、主任ケアマネや常勤のケアマネを手厚く配置し、24時間の連絡体制や計画的な研修、支援が困難な事例の受け入れなどを行っている居宅介護支援事業所を評価する加算です。利用者1人につき月ごとに、基本報酬に上乗せして算定します。
個々のケアマネの頑張りではなく、事業所として「チームで質を保つ仕組み」があるかどうかを評価する点が特徴です。
4つの区分と単位数
特定事業所加算には4つの区分があり、1か月あたりの単位数は、加算Ⅰが519単位、加算Ⅱが421単位、加算Ⅲが323単位、加算Aが114単位です。
出典:厚生労働省 社会保障審議会介護給付費分科会 第259回 資料6 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
加算Ⅰが最も手厚い体制を求める区分で、加算Ⅱ・Ⅲと段階的に要件が緩やかになります。加算Aは、小規模な事業所でも他の事業所との連携によって要件を満たせるように設けられた区分です。
2024年度改定で変わったこと
2024年度の介護報酬改定では、各区分の単位数が引き上げられたほか、次のような見直しが行われました。
- ヤングケアラー、障害者、生活困窮者、難病患者など、他制度に関する知識の事例検討会や研修への参加を要件に追加
- 主任ケアマネ・ケアマネの専任要件について、介護予防支援や地域包括支援センターの委託業務との兼務が可能であることを明確化
- 毎月の確認作業を減らすため、運営基準減算に関する要件を削除
- ケアマネ1人あたりの利用者数の要件を、居宅介護支援費の見直しに合わせて変更
出典:厚生労働省 同上資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
区分ごとの主な要件
特定事業所加算の要件は全部で13項目あり、区分によって求められる内容が異なります。ここでは、区分の違いが大きい「人員配置」と、全区分に共通する「運営の要件」に分けて整理します。
人員配置の要件
区分による違いが最も大きいのが人員配置です。常勤専従の主任ケアマネと、常勤のケアマネの配置人数は次のとおりです。
- 加算Ⅰ:主任ケアマネ2名以上、常勤のケアマネ3名以上
- 加算Ⅱ:主任ケアマネ1名以上、常勤のケアマネ3名以上
- 加算Ⅲ:主任ケアマネ1名以上、常勤のケアマネ2名以上
- 加算A:主任ケアマネ1名以上、常勤と非常勤のケアマネ各1名以上
出典:厚生労働省 同上資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
なお、利用者への支援に支障がない場合は、同じ事業所の他の職務や、同一敷地内の事業所の職務との兼務も認められています。
全区分に共通する運営の要件
人員配置のほか、次のような運営体制が求められます。
- 利用者の情報やサービス提供上の留意事項を伝達する会議を定期的に開催している
- 24時間の連絡体制を確保し、必要に応じて利用者の相談に対応できる
- 事業所のケアマネに対して計画的に研修を実施している
- 地域包括支援センターから紹介された支援困難事例も受け入れている
- ヤングケアラーや障害者、生活困窮者など、高齢者以外の支援に関する事例検討会・研修に参加している
- 運営基準減算や特定事業所集中減算を受けていない
- ケアマネ1人あたりの利用者数が45名未満(居宅介護支援費(Ⅱ)を算定している場合は50名未満)
- 介護支援専門員実務研修の実習などに協力している
- 他の法人の居宅介護支援事業者と共同で事例検討会や研修会を実施している
- インフォーマルサービスを含む多様な生活支援のサービスを位置付けたケアプランを作成している
このうち加算Aでは、24時間の連絡体制や計画的な研修、実習への協力、他法人との共同の事例検討会などについて、他の事業所との連携で満たすことも認められています。
算定を始めるための手続き
特定事業所加算を算定するには、要件を満たす体制を整えたうえで、事業所の指定権者である市町村に体制の届出を行う必要があります。算定を始めた後も、人員の配置や利用者数、要介護3〜5の利用者の割合などの要件を満たしているかを毎月確認し、満たさなくなった場合は速やかに届出を変更します。
会議の開催や研修の実施、事例検討会への参加などは、実施したことを記録として残しておくことが大切です。運営指導(実地指導)の際に要件を満たしていることを説明できなければ、加算の返還を求められることもあるため、議事録や研修計画を日ごろから整えておきましょう。
加算Ⅰだけに求められる要件
加算Ⅰでは、上記に加えて、利用者のうち要介護3〜5の人が占める割合が40%以上であることが求められます。重度の利用者を多く支えている事業所を、より高く評価する仕組みです。
出典:厚生労働省 同上資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
算定状況と、上乗せされる加算
特定事業所加算は、実際にどのくらいの事業所が算定しているのでしょうか。国の統計から算定状況を確認し、特定事業所加算とあわせて算定できる加算も紹介します。
最も多いのは加算Ⅱ
2025年11月審査分の統計では、居宅介護支援の請求事業所のうち、加算Ⅱを算定している事業所が23.84%と最も多く、加算Ⅲが14.08%、加算Ⅰが1.71%、加算Aが0.89%でした。件数ベースでは、加算Ⅱが居宅介護支援全体の45.02%を占めています。
出典:厚生労働省 同上資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
事業所数では約4割が何らかの区分を算定している一方、加算Ⅰは主任ケアマネ2名以上と重度者割合の要件があるため、算定できている事業所はごく一部にとどまっています。件数ベースの割合が事業所ベースより高いことからは、利用者を多く抱える規模の大きい事業所で算定が進んでいる様子がうかがえます。
医療との連携を評価する「特定事業所医療介護連携加算」
特定事業所加算Ⅰ〜Ⅲを算定している事業所が、医療機関との連携の実績を一定以上積んでいる場合は、さらに「特定事業所医療介護連携加算」(月125単位)を算定できます。要件には、退院・退所時の連携の実績や、前々年度3月から前年度2月までの間にターミナルケアマネジメント加算を15回以上算定していることなどが含まれます。算定している事業所は1.07%にとどまっています。
出典:厚生労働省 同上資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
算定率の低い加算は見直しの論点に
国の介護給付費分科会では、介護報酬の加算が増えて要件が複雑になっていることを踏まえ、算定率が低い加算の扱いが論点の一つに挙げられています。その例として、特定事業所加算も名前が挙がっています。今後の報酬改定で要件や区分が変わる可能性があるため、国の動きに注目しておきましょう。
出典:厚生労働省 同上資料 https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001716151.pdf
特定事業所加算とケアマネの働き方
特定事業所加算は事業所の収入に関わる加算ですが、ケアマネ一人ひとりの働き方にも影響します。最後に、働く側の視点から加算を見ていきます。
相談できる仲間がいる職場の目安になる
特定事業所加算を算定している事業所には、複数のケアマネと主任ケアマネが常勤で配置され、定期的な会議や事例検討会が行われています。新人や復帰したばかりのケアマネにとって、迷ったときに相談できる相手がいる環境かどうかを見極める目安になります。
24時間対応の当番が発生する
一方で、24時間の連絡体制が要件になっているため、夜間や休日に緊急の電話を受ける当番が回ってくることがあります。当番の頻度や、実際に対応が必要になったときの手当、翌日の勤務の調整などは事業所によって異なります。入職前に確認しておくと、働き始めてからのギャップを減らせます。
管理者が押さえたい運用のポイント
特定事業所加算を安定して算定し続けるうえで、管理者にとって大きな課題になるのが人員の確保です。主任ケアマネや常勤のケアマネが1人退職するだけで、算定できる区分が変わることがあります。採用だけに頼らず、事業所内のケアマネが主任研修を受けられるよう計画的に育成しておくことが、加算を維持する土台になります。
また、24時間の連絡体制は、特定の職員に負担が偏ると離職の原因になりかねません。当番を複数の職員で公平に回す、緊急対応の判断基準を事前に共有しておくなど、無理なく続けられる運用を工夫しましょう。
研修や地域活動に参加する機会が増える
計画的な研修の実施や、他法人と共同での事例検討会、実務研修の実習受け入れなども要件に含まれます。日々の業務に加えて研修や地域の活動に参加する機会が多くなる分、スキルを高めやすい環境とも言えます。
特定事業所加算についてのよくある質問
Q. 特定事業所加算は利用者の負担になりますか?
A. 居宅介護支援には利用者の自己負担がないため、特定事業所加算を算定しても、利用者が費用を負担することはありません。
Q. 主任ケアマネが1人退職したら、加算はどうなりますか?
A. 人員配置の要件を満たさなくなった場合は、その区分の加算を算定できなくなります。上位の区分から下位の区分へ変更するなど、体制の変更を届け出る必要があるため、早めに市町村に相談しましょう。
Q. ケアマネが2人の事業所でも算定できますか?
A. 常勤のケアマネが2名以上いれば加算Ⅲの人員要件を満たせる可能性があります。また、加算Aは常勤・非常勤各1名以上で、他の事業所との連携によって一部の要件を満たすことができます。
Q. 特定事業所加算を算定すると、ケアマネの給料は上がりますか?
A. 加算による収入をどう配分するかは事業所の判断によります。ただし、加算を算定している事業所は体制が整っている分、手当や研修制度が充実している場合もあるため、求人を見る際の参考になります。
Q. 加算の算定状況はどこで確認できますか?
A. 厚生労働省の「介護サービス情報公表システム」で、事業所ごとの加算の算定状況や体制を調べることができます。
特定事業所加算についてのまとめ
特定事業所加算は、主任ケアマネの配置や24時間の連絡体制など、質の高いケアマネジメントの体制を評価する加算で、加算Ⅰ〜Ⅲと加算Aの4区分があります。最も多く算定されているのは加算Ⅱで、加算Ⅰは要件が厳しく一部の事業所に限られます。働く側にとっては、相談できる環境の目安になる一方、24時間対応の当番も伴います。今後の改定の動きにも注目しておきましょう。

