ケアマネ試験の勉強法|合格基準の構造から逆算する、落ちない学習設計
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
ケアマネ試験の勉強法でつまずく最大の原因は、合格基準の構造を知らないまま学習を始めることです。この試験は2つの分野それぞれで基準点を超える必要があり、得意分野で苦手分野を補うことができません。合格率も年によって10%台から30%台まで動きます。この記事では公的資料をもとに、合格基準から逆算した現実的な学習設計を整理します。
勉強法を決める前に「合格基準」を理解する
やみくもに問題集を解き始める前に、どうすれば合格になるのかを正確に把握することが最短ルートです。この試験特有の判定方法を確認します。
2つの分野それぞれで基準点を超える必要がある
ケアマネ試験は「介護支援分野」と「保健医療福祉サービス分野」の2分野から出題され、配点は1問1点です。合格基準は、それぞれの分野について正答率70%を基準とし、問題の難易度で補正して設定されます。そして、両方の分野で基準に達した者を合格とすると定められています。
つまり総合点でいくら稼いでも、片方が基準に届かなければ不合格です。「得意分野で稼いで苦手を補う」という一般的な受験戦略が、この試験では通用しません。学習配分は最初から「苦手分野に厚く」が原則になります。
出典:東京都福祉局「令和7年度(第28回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験に係る正答番号及び合格基準の公表について」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shikaku/r7_seitoukijyun
問題も基準も全国共通
試験問題と合格基準は、介護保険法第69条の11第1項に規定する登録試験問題作成機関である公益財団法人社会福祉振興・試験センターが作成・決定しており、各都道府県共通の問題および基準となっています。
受験地によって難易度が変わることはありません。全国どこで受けても同じ土俵であるため、地域を理由に有利不利を考える必要はなく、対策も全国共通の情報で組み立てられます。
出典:東京都福祉局「令和7年度(第28回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験に係る正答番号及び合格基準の公表について」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shikaku/r7_seitoukijyun
合格ラインは固定されていない
基準は正答率70%を出発点としつつ、その年の問題の難易度で補正されます。したがって「何点取れば必ず合格」という固定値は存在しません。
この不確実性への唯一の備えが、余裕を持った得点力です。直近の第28回の合格率は25.6%でしたが、第27回は32.1%、第21回は10.1%と大きく振れています。合格率が低い年に当たっても通過できる水準を目標に据える必要があります。
出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html
公式に公開されている資料を使い倒す
市販教材を揃える前に、無料で入手できる公的な情報を確認しておくと学習の精度が上がります。意外と知られていない情報源を紹介します。
都道府県が試験問題と正答番号を公表している
試験問題、正答番号、合格基準は都道府県が公表しています。たとえば東京都は、正答番号および合格基準とあわせて試験問題そのものをPDFで公開しています。
市販の問題集は解説が充実している一方、掲載順や表記が編集されています。本番の問題冊子と同じ形式で解いておくことは、時間配分の感覚をつかむうえで有効です。公式に公開されている資料を軸に据えるのが、情報の正確性という点でも安全です。
出典:東京都福祉局「令和7年度(第28回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験に係る正答番号及び合格基準の公表について」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shikaku/r7_seitoukijyun
制度改正の情報は一次資料で確認する
ケアマネ試験は介護保険制度が出題の中心にあるため、制度改正の影響を受けます。改正が続く分野では、古い教材の記述が現行制度と食い違うことがあります。
たとえば2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)では、介護支援専門員証の有効期間と更新のための研修の廃止が定められました。こうした最新の動きは、厚生労働省が発出する通知や審議会資料で確認するのが確実です。学習の土台となる制度理解は、一次資料に当たる習慣とセットにしてください。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
自分の受験地の要領を早めに入手する
受験要領には試験日、申込期間、提出書類、受験手数料が記載されています。学習計画とは別に、手続きのスケジュールを押さえておくことが前提条件になります。
第29回試験は2026年10月11日(日)実施で、申込受付はすでに終了しています。これから準備する人が目指すのは2027年(第30回)試験です。受験手数料は都道府県によって異なり、たとえば大阪府では13,400円(別途払込手数料)です。
出典:大阪府「第29回大阪府介護支援専門員実務研修受講試験のお知らせ」https://www.pref.osaka.lg.jp/o090100/kaigoshien/care/shiken03.html
分野別の攻め方を変える
2分野で合格基準の考え方が同じである以上、対策も両輪で進める必要があります。ただし性質が異なるため、アプローチは分けたほうが効率的です。
介護支援分野は「捨てられない」
介護支援分野は介護保険制度の仕組みそのものが問われる領域で、実務で日常的に扱っていない条文や手続きが出題されます。現場経験だけでは埋まらない知識が多く、意識的な学習が必要です。
この分野は保健医療福祉サービス分野より問題数が少ないため、1問あたりの重みが相対的に大きくなります。数問の取りこぼしが基準割れに直結する構造です。学習の初期から時間を割き、直前期に慌てて詰め込む対象にしないことが重要になります。
保健医療福祉サービス分野は職種による差が出る
保健医療福祉サービス分野は、医療・福祉の各サービスに関する知識が問われます。看護師や理学療法士といった医療職は医療系の設問で有利になりやすく、介護福祉士は福祉サービス系の設問に馴染みがあるはずです。
ただし自分の専門外の領域は確実に存在します。第28回の合格者は介護福祉士が64.1%、看護師・准看護師が16.2%、社会福祉士が6.6%と多様な職種で構成されており、どの職種であっても手薄な範囲が生じます。得意な設問で満足せず、専門外の領域にこそ時間を配分してください。
出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html
過去問は「両分野の基準到達」を指標にする
過去問演習では、総合点ではなく分野ごとの得点を記録してください。総合点だけを追うと、片方の分野の弱さが見えなくなります。
目標は、複数年分の過去問で両分野とも安定して7割以上を確保できる状態です。合格基準は難易度によって補正されますが、7割を安定して超えられていれば、補正がどちらに動いても対応できます。
年1回の試験から逆算してスケジュールを組む
ケアマネ試験は受験機会が年1回に限られます。計画の立て方そのものが合否を左右するため、時間軸の設計を確認します。
試験は10月、申込は5月下旬から6月
例年、受験要領の配布と申込受付は5月下旬から6月にかけて行われ、試験は10月の日曜日に全国一斉で実施されます。合否は11月下旬に通知されるのが一般的です。
申込には実務経験証明書と資格の登録証等の写しの提出が必要で、証明書は勤務先ごとに代表者印をもらう必要があります。退職済みの職場に依頼するケースもあるため、書類準備は学習と並行して早めに動くのが安全です。
出典:大阪府「第29回大阪府介護支援専門員実務研修受講試験のお知らせ」https://www.pref.osaka.lg.jp/o090100/kaigoshien/care/shiken03.html
働きながら学ぶ前提で計画を立てる
受験資格の要件上、受験者のほとんどは現役で働いています。第28回の合格者は介護福祉士が64.1%、看護師・准看護師が16.2%を占めており、シフト勤務や夜勤を抱えた層が中心です。
まとまった時間を確保するより、短時間を積み上げるほうが現実的です。夜勤明けにまとめて詰め込む方法は定着率の面でも体調面でも負担が大きいため、平日は問題演習、休日は苦手分野の集中学習といった具合に役割を分けると継続しやすくなります。
出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html
合格後の87時間研修まで視野に入れる
合格はゴールではありません。合格後は都道府県が実施する介護支援専門員実務研修(87時間以上)を修了し、資格登録を経て介護支援専門員証の交付を受けて、はじめてケアマネとして働けます。
講義と演習で構成され、平日日中の日程が組まれることも多いため、勤務先との調整が必要です。合格発表から研修開始まで時間の余裕は多くありません。受験を決めた段階で研修期間の確保まで想定しておくと、合格後の動きがスムーズになります。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2 地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf
ケアマネ試験の勉強法についてよくある質問
学習の進め方について、特に問い合わせが多い点をまとめました。
どの分野から勉強すればよいですか?
介護支援分野からです。2つの分野それぞれで基準点を超える必要があり、介護支援分野は問題数が少ない分1問の重みが大きくなります。現場経験だけでは埋まらない制度知識が中心のため、早い段階から着手してください。
得意分野で高得点を取れば合格できますか?
できません。合格基準は分野ごとに設定され、両方の分野で基準に達している必要があります。片方が届かなければ、総得点が高くても不合格です。
合格ラインは何点ですか?
固定の点数はありません。各分野について正答率70%を基準とし、その年の問題の難易度で補正されます。過去問で両分野とも安定して7割を超えられる状態が実質的な目標になります。
過去問はどこで手に入りますか?
試験問題や正答番号、合格基準は都道府県が公表しています。たとえば東京都は試験問題をPDFで公開しています。本番と同じ形式で解けるため、時間配分の練習に有効です。
独学でも合格できますか?
第28回だけで12,961人が合格しています。ただし合格率は25.6%で、年によっては10%台まで下がります。独学かどうかより、両分野で安定して基準を超えられる状態をつくれるかが分かれ目です。
教材は最新版でないとだめですか?
介護保険制度は改正が続いており、古い教材の記述が現行制度と食い違うことがあります。2026年6月には介護支援専門員証の有効期間の廃止などを含む法律も公布されました。制度部分は厚生労働省の通知など一次資料での確認をおすすめします。
ケアマネ試験の勉強法についてのまとめ
ケアマネ試験の勉強法は、合格基準の構造から逆算するのが近道です。2つの分野それぞれで正答率70%を基準とした水準に到達する必要があり、苦手分野を得意分野で補えません。特に介護支援分野は1問の重みが大きく、最優先で取り組む領域です。過去問は分野別に得点を記録し、両分野とも安定して7割を超える状態を目指しましょう。年1回の試験だからこそ、書類準備も含めた逆算が欠かせません。

