試験資格

ケアマネに将来性はない?需要のピークが2043年という不都合な事実

admin_next

監修者

名前 / Name  
大石 智之

実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。

その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。

さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。

約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。

設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。

現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。

「ケアマネはこの先どうなるのか」。更新制の廃止やAIの話題が飛び交うなか、将来性を不安に感じる人は少なくありません。しかし公的データを並べると、需要・制度・処遇のいずれも縮小ではなく拡大の方向を示しています。この記事では高齢者人口の推計、2026年に公布された法改正の中身、平均給与の実額をもとに、ケアマネの将来性を客観的に読み解きます。


需要のピークはまだ先にある

将来性を考えるうえで最初に押さえるべきは、需要そのものの見通しです。高齢者人口と介護職員の必要数について、政府が公表している推計を確認します。

65歳以上人口のピークは2043年

内閣府の令和7年版高齢社会白書によれば、令和6年10月1日現在の総人口は1億2,380万人、65歳以上人口は3,624万人で、高齢化率は29.3%です。このうち75歳以上人口は2,078万人で、総人口の16.8%を占めています。

そして65歳以上人口は今後も増加傾向が続き、令和25年(2043年)に3,953万人でピークを迎えると推計されています。さらに75歳以上人口は令和37年(2055年)にピークを迎える見込みです。つまり、支援を必要とする層が増え続ける局面は、まだ20年以上先まで続きます。

出典:内閣府「令和7年版高齢社会白書 1 高齢化の現状と将来像」https://www8.cao.go.jp/kourei/whitepaper/w-2025/html/zenbun/s1_1_1.html

介護職員は2040年に約272万人が必要

厚生労働省は、第9期介護保険事業計画の介護サービス見込み量等に基づき、都道府県が推計した介護職員の必要数を公表しています。それによれば2026年度には約240万人、2040年度には約272万人の確保が必要とされ、2022年度の約215万人と比べて2040年度までに約57万人の増加が求められる計算です。

介護サービスの利用が増えれば、その入口でケアプランを作成し、サービスを調整する役割の需要も連動します。介護分野全体が人手不足を前提に制度設計されている状況は、当面変わりません。

出典:厚生労働省「介護人材確保に向けた取組 第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数について」https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_02977.html

「高齢者が減る地域」でも仕事はなくならない

地方では既に高齢者人口が減少に転じている地域もあります。ただし高齢化率そのものは上昇し続けており、支える側の現役世代がより速く減っていくため、限られた資源をどう配分するかという調整の重要性はむしろ高まります。

需要の総量ではなく、業務の中身が地域ごとに変わっていくと捉えるほうが実態に近いといえます。


制度改正が示す「国のケアマネ観」

将来性を判断する材料として、制度がその職種をどう扱っているかは重要な指標です。2026年に公布された法改正の内容から、国の姿勢を読み取ります。

更新制は廃止、しかし研修は法律上の義務に

2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)により、介護支援専門員証の有効期間と、その交付・更新のために受講することとされていた研修が廃止されます。5年ごとに資格を失うリスクがなくなる、働き手にとって大きな改善です。

一方で、厚生労働省令で定める者を除く介護支援専門員は、資質の保持および向上のため、都道府県知事が行う研修を受けるものとされました。正当な理由なく受けない場合は受講命令が出され、従わなければ1年以内の期間を定めて業務を禁止することができるとされています。役割を縮小させるのではなく、専門職としての質を担保しながら続けやすくする設計です。

出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf

事業者にも研修機会の確保義務が課される

同じ改正で、条例により介護支援専門員を置かなければならないとされている事業者・施設の開設者に対し、ケアマネを業務に従事させたとき・従事しなくなったときの都道府県知事への報告義務が新設されました。

さらに、雇用しているケアマネの資質の保持・向上のため、研修の受講機会を確保する措置をとる義務が課され、怠れば勧告や公表の対象となります。「研修に行かせてもらえない」という現場の課題を、制度側から解消しようとする内容です。将来性が乏しい職種に、ここまでの手当てはされません。

出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf

新しい支援類型も創設された

この法律では、一定の要件に該当する有料老人ホームに係る登録制度が創設され、その登録有料老人ホームの入居者を対象とする「登録施設介護支援」「登録施設介護予防支援」が新たな類型として設けられました。

登録施設介護支援は、登録有料老人ホームの居室で介護を受ける要介護者についてサービス計画を作成し、事業者との連絡調整などを行うものとされています。ケアマネジメントを担う場面が減るどころか、活躍の場が制度上増えたことになります。

出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf


「AIに代替される」「不要論」をどう考えるか

将来性の議論で必ず出てくるのが、テクノロジーによる代替と不要論です。制度の設計から、これらの見方の妥当性を検証します。

代替されるのは「作業」であって「判断」ではない

ケアプラン作成を支援するツールやICTの導入によって、記録・転記・書類作成といった作業の負担は今後さらに軽くなります。ただしこれは、利用者や家族の意向を聴き取り、医療・介護・地域資源のあいだで調整し、責任を持って判断する部分まで機械が担うという意味ではありません。

事実、国は研修受講を法律上の義務とし、事業者に受講機会の確保まで求めています。判断を担う専門職として位置づけているからこそ、質の担保に手を打っているという読み方が自然です。

入口はむしろ広げようとしている

厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会に対し、受験対象となる国家資格の範囲を広げる案を示しています。具体的には診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師の5職種の追加が挙げられ、実務経験年数についても現行の5年から3年に見直す方向性が示されました。

不要な職種であれば、入口を広げて担い手を増やす必要はありません。担い手不足への対応として制度が動いている事実は、需要の裏返しです。

出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2 地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf

現実的なリスクは「働き方の格差」

将来性のリスクがあるとすれば、職種そのものの消滅ではなく、職場による働き方の差が開いていくことです。ICTを導入して事務負担を減らした事業所と、手書き・FAX中心のまま残業が積み上がる事業所とでは、同じ資格でも働きやすさがまったく異なります。

資格の将来性と、いま所属している職場の将来性は別問題です。不安を感じたときに見直すべきは資格ではなく環境である、というケースは少なくありません。


将来性を自分のキャリアに変えるために

見通しが分かったところで、個人として何を選べば将来性を享受できるかを整理します。処遇の実額と、キャリアの選択肢を確認します。

平均給与は介護職員より約3.7万円高い

厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査によれば、処遇改善加算を取得している事業所における月給・常勤の平均給与額は、介護支援専門員が375,410円、介護職員が338,200円でした。前年の令和5年9月と比べると、介護支援専門員は11,650円の増加です。

さらに令和8年6月からは、長らく対象外だった居宅介護支援も介護職員等処遇改善加算の対象となりました。

また、介護職員のうち介護支援専門員の資格を持つ人の平均給与額は388,080円で、介護福祉士の350,050円を上回っています。資格取得が処遇に反映される構造は数字で確認できます。

職種・資格平均給与額(月給・常勤)
介護支援専門員375,410円
看護職員384,620円
生活相談員・支援相談員353,950円
介護職員338,200円

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/dl/r06gaiyou.pdf

資格を取れる人は限られている

ケアマネ試験は誰でも受けられるわけではありません。介護保険法施行規則第113条の2に定める法定資格に基づく業務、または指定された相談援助業務に、通算5年以上かつ900日以上従事していることが必要です。

さらに直近の第28回試験の合格率は25.6%でした。受験資格と試験の二重のハードルがあるため、有資格者の供給は急には増えません。希少性が保たれることは、働く側にとって将来性の裏づけになります。

出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html

選べる働き方が増えている

ケアマネの活躍の場は居宅介護支援事業所だけではありません。施設のケアマネ、地域包括支援センター、主任介護支援専門員としてのマネジメント職など、経験を積んだ先の選択肢が複数あります。

ICTの活用が進む事業所では、記録業務の効率化によって在宅勤務や時短勤務を組み合わせる働き方も現実的になってきました。将来性を最大限に活かすには、資格を取ることに加えて、どの環境で働くかを主体的に選ぶ視点が欠かせません。


ケアマネの将来性についてよくある質問

将来性をめぐって特に問い合わせが多い点をまとめました。

ケアマネの需要は今後減りますか?

内閣府の推計では65歳以上人口は令和25年(2043年)に3,953万人でピークを迎えるとされ、75歳以上人口のピークはさらに後です。厚生労働省は2040年度に約272万人の介護職員が必要と推計しており、当面は需要が拡大する局面が続きます。

更新制が廃止されると資格の価値は下がりますか?

下がる要素は見当たりません。廃止されたのは有効期間と更新のための研修であり、代わりに都道府県知事が行う研修の受講が法律上の義務となりました。質を担保しながら続けやすくする改正です。

AIにケアマネの仕事は奪われますか?

記録や書類作成といった作業は効率化が進みます。一方で国は研修受講を義務化し、事業者にも受講機会の確保を求めており、判断を担う専門職として位置づけを強めています。作業と判断は分けて考える必要があります。

ケアマネの給料は上がっていますか?

厚生労働省の令和6年度調査では、介護支援専門員の平均給与額は375,410円で、前年比11,650円の増加でした。介護職員の338,200円と比べても高い水準です。

これから資格を取っても遅くないですか?

受験資格の実務経験年数を5年から3年に短縮する案や、対象資格に5職種を追加する案が検討されています。国が入口を広げようとしている段階であり、需要の裏づけがあると読み取れます。

将来性に不安を感じたらどうすればよいですか?

資格の将来性と、いま所属している職場の将来性は別の問題です。ICT導入の有無や残業の状況によって働きやすさは大きく変わるため、まず環境を見直す視点が有効です。


ケアマネの将来性についてのまとめ

ケアマネの将来性は、公的データで見る限り明るい方向です。65歳以上人口は2043年まで増え続け、介護職員は2040年度に約272万人が必要とされています。2026年の法改正では更新制が廃止される一方、研修受講が法律上の義務となり、事業者にも受講機会の確保が求められました。平均給与も介護職員を上回っています。不安の対象が資格なのか職場なのかを切り分けることが第一歩です。だからこそ、一度で決める前提で準備を進めましょう。。す。自分の勤務日数を数えるところから始めましょう。


執筆者
ケアマネクスト編集部
ケアマネクスト編集部
ケアマネとして働く方のキャリアの「次」と、事業所のこれからの「次」。
その両方の後押しになるよう、試験や制度、働き方、事業承継の情報をお届けしています。
記事URLをコピーしました