働き方DX

ケアマネの給料が安いと言われる理由。処遇改善加算の対象外だった構造を解説

admin_next

監修者

名前 / Name  
大石 智之

実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。

その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。

さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。

約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。

設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。

現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。

ケアマネの給料は、実は介護職員の平均を上回っています。それでも「安い」と言われ続けてきたのには、はっきりした構造的な理由があります。居宅介護支援が長らく処遇改善加算の対象外だったこと、担当できる件数に上限があること、報酬が公定価格であること。公的資料をもとに、その仕組みと最新の制度変更を整理します。


まず実際の給与水準を確認する

「安い」という体感を検証するために、公的調査の数字から出発します。他職種との比較で見えてくるものがあります。

平均給与額は介護職員を約3.7万円上回る

厚生労働省の令和6年度介護従事者処遇状況等調査によれば、処遇改善加算を取得している事業所における月給・常勤の平均給与額は、介護支援専門員が375,410円、介護職員が338,200円でした。差はおよそ3万7千円です。

さらに介護職員の保有資格別で見ると、介護福祉士が350,050円であるのに対し、介護支援専門員の資格を持つ人は388,080円となっています。資格そのものが処遇に反映されていること自体は、数字で確認できます。

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/dl/r06gaiyou.pdf

それでも看護職員には届かない

一方で、同じ調査では看護職員の平均給与額が384,620円となっており、介護支援専門員はこれを下回ります。生活相談員・支援相談員は353,950円です。

医療系の国家資格から転身した人にとっては、責任が増えたのに手取りが下がるという事態が起こり得ます。「安い」という声の一部は、この比較から生じています。

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/dl/r06gaiyou.pdf

前年からは11,650円増えている

推移も押さえておきましょう。同調査では、介護支援専門員の平均給与額は前年の令和5年9月と比べて11,650円の増加とされています。

つまり水準そのものは上がってきています。それでも不満が根強いのは、金額の絶対値ではなく、上がり方の仕組みに問題があったためです。次の章でその構造を見ていきます。

出典:厚生労働省「令和6年度介護従事者処遇状況等調査結果の概要」https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/kaigo/jyujisya/24/dl/r06gaiyou.pdf


最大の理由は処遇改善加算の対象外だったこと

給料が上がりにくかった最大の構造的要因がこれです。制度の設計そのものに、ケアマネが含まれていませんでした。

2026年5月まで、居宅介護支援は加算の対象外だった

介護職員の賃上げを支えてきたのが介護職員等処遇改善加算です。しかしこの加算の対象サービスから、居宅介護支援と介護予防支援は除かれていました。

訪問介護や通所介護など多くのサービスで加算による賃上げが進むなかで、ケアマネの事業所にはその原資が入らない構造だったということです。「同じ介護の現場にいるのに自分だけ上がらない」という体感には、制度上の根拠がありました。

2026年度改定で新たに対象となる

この状況は変わります。社会保障審議会介護給付費分科会の令和8年度介護報酬改定に関する審議報告では、現行の介護職員等処遇改善加算の対象サービスにおいて介護職員以外の介護従事者を新たに対象とすることに加え、訪問看護及び介護予防訪問看護、訪問リハビリテーション及び介護予防訪問リハビリテーション、並びに居宅介護支援及び介護予防支援を対象とすることが適当であるとされ、令和8年6月1日から居宅介護支援も介護職員等処遇改善加算の対象となっています。

長年の課題がようやく制度として手当てされることになります。ケアマネの処遇を考えるうえで、これは決定的な転換点です。

出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告(社会保障審議会介護給付費分科会)」

https://www.mhlw.go.jp/content/12306000/001618506.pdf

ただし算定するかは事業所次第

ただし加算の対象になれば自動的に給料が上がるわけではありません。同じ審議報告では、新たに対象となるサービスについて、現行でも対象となっているその他のサービスとの均衡の観点から、現行の介護職員等処遇改善加算Ⅳの取得に準ずる要件として、キャリアパス要件Ⅰ及びⅡ並びに職場環境等要件を算定の要件とすることが適当であるとされています。

あわせて、当該要件の整備には一定の期間を要することを踏まえた配慮措置を講じるとされました。つまり事業所が要件を整えて算定しなければ、賃上げの原資は入りません。勤務先が対応しているかどうかで差が出ることになります。

出典:厚生労働省「令和8年度介護報酬改定に関する審議報告(社会保障審議会介護給付費分科会)」

https://www.mhlw.go.jp/content/12306000/001618506.pdf


収入の上限が制度で決まっている

もう一つの構造的要因が、事業所の売上そのものに天井があることです。給与はその範囲でしか支払えません。

担当できるのは利用者44人まで

「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)第2条第2項は、介護支援専門員の員数の基準について、利用者の数が44またはその端数を増すごとに1とすると定めています。介護予防支援を行う場合は、その利用者数に3分の1を乗じた数を加えて計算します。

居宅介護支援の収入は利用者ごとの報酬が中心です。担当件数に上限がある以上、1人のケアマネが生み出せる売上にも上限があります。頑張って件数を増やして稼ぐ、という発想が制度上できません。

出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1

条件を満たせば49人まで引き上げられる

緩和の仕組みは用意されています。同条第3項は、事業所が、公益社団法人国民健康保険中央会が運用および管理を行う、居宅サービス計画の情報の共有等のための情報処理システムを利用し、かつ事務職員を配置している場合には、その基準を利用者数49ごとに1とすると定めています。

条件は「システムの利用」と「事務職員の配置」の2つです。ICTの導入が進んでいない事業所では、この5人分の余地も使えないことになります。処遇の差は、事業所の体制の差でもあります。

出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1

単価を自分で上げることはできない

収入構造のもう一つの制約が価格です。同基準第10条は、利用料と居宅介護サービス計画費の額との間に不合理な差額が生じないようにしなければならないと定めています。

質の高いケアマネジメントを提供したから単価を上げる、という調整はできません。売上は「単価×件数」で決まり、そのどちらも制度側が握っている状態です。給与の原資が構造的に固定されている以上、事業所の努力だけでは限界があります。

出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1


負担と処遇の釣り合いをどう考えるか

金額の話だけでは納得感につながりません。仕事の中身と照らして整理します。

責任の重さは制度で定められている

ケアマネには法令上の重い責務があります。同基準第25条は、事業者および管理者が介護支援専門員に対して特定の居宅サービス事業者等のサービスを位置付けるべき旨の指示等を行ってはならないと定め、介護支援専門員自身も利用者に対して特定の事業者を利用すべき旨の指示等を行ってはならないとしています。

さらに、特定の事業者のサービスを利用させることの対償として金品その他の財産上の利益を収受してはならないとされています。公正中立という重い倫理が制度として課される一方、それが直接報酬に反映される仕組みはありません。

出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」

https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1

更新のための負担は将来なくなる

処遇と表裏一体だったのが、資格維持のコストです。これまでは介護支援専門員証に5年の有効期間があり、更新のたびに研修の受講と費用が必要でした。研修時間は都道府県が定めており、たとえば千葉県では専門研修課程Ⅰが56時間以上、課程Ⅱが32時間以上と案内されています。

2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)により、この有効期間と更新のための研修は廃止されます。ただし施行は公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内で政令が定める日です。可処分時間と費用の両面で、負担は軽くなる方向にあります。

出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」

https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf / 千葉県「介護支援専門員(ケアマネジャー)の研修について」https://www.pref.chiba.lg.jp/koufuku/kaigohoken/senmonin/kaigoshien/koushinkensyu.html

同じ資格でも事業所で差が出る

ここまで見てきたとおり、処遇を左右するのは資格ではなく事業所の体制です。処遇改善加算の要件を整えて算定しているか、データ連携システムと事務職員を配置して件数の余地を確保しているか、書類や会議の負担をどこまで軽くしているか。

同じ制度のもとでも、これらの対応状況によって働き方も収入も変わります。給与に不満を感じたとき、見直すべきは資格そのものではなく、いま所属している環境である場合が少なくありません。


ケアマネの給料が安い理由についてよくある質問

処遇をめぐって疑問が多い点をまとめました。

ケアマネの給料は本当に安いのですか?

厚生労働省の令和6年度調査では、月給・常勤の平均給与額は介護支援専門員375,410円、介護職員338,200円で、介護職員より高い水準です。一方で看護職員の384,620円は下回ります。

なぜ上がりにくかったのですか?

介護職員等処遇改善加算の対象サービスから、居宅介護支援と介護予防支援が除かれていたためです。他のサービスで加算による賃上げが進むなかで、原資が入らない構造でした。

今後は改善されますか?

令和8年度介護報酬改定に関する審議報告で、居宅介護支援及び介護予防支援を新たに介護職員等処遇改善加算の対象とすることが適当であるとされました。ただし算定にはキャリアパス要件や職場環境等要件の整備が必要です。

件数を増やせば収入は増えますか?

限度があります。介護支援専門員の員数の基準は利用者44人ごとに1人で、データ連携システムの利用と事務職員の配置がある場合に49人ごととなります。

質の高い支援をすれば単価は上がりますか?

上がりません。利用料と居宅介護サービス計画費の額との間に不合理な差額が生じないようにしなければならないと定められており、単価は制度で決まります。

資格維持の費用負担は続きますか?

2026年6月公布の法律により、介護支援専門員証の有効期間と更新のための研修は廃止されます。施行は公布から1年6か月以内の政令で定める日です。


ケアマネの給料が安い理由についてのまとめ

ケアマネの平均給与額は介護職員を上回りますが、看護職員には届きません。上がりにくかった最大の理由は、居宅介護支援が介護職員等処遇改善加算の対象外だったことです。加えて担当件数の上限と公定価格により、売上そのものに天井があります。令和8年度改定で加算の対象とすることが適当とされましたが、算定には事業所側の要件整備が必要です。処遇の差は事業所の体制の差でもあります。う。もっておきましょう。ろから始めましょう。


執筆者
ケアマネクスト編集部
ケアマネクスト編集部
ケアマネとして働く方のキャリアの「次」と、事業所のこれからの「次」。
その両方の後押しになるよう、試験や制度、働き方、事業承継の情報をお届けしています。
記事URLをコピーしました