ケアマネのICT活用はどこまで可能か。2027年1月のシステム移行と助成制度を解説
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
ケアマネのICT活用は、ツールを買うことではなく制度を使い切ることから始まります。モニタリングのオンライン実施も、担当者会議のテレビ電話開催も、省令で正式に認められています。さらに2026年7月、ケアプランデータ連携システムを介護WEBサービスへ移行する事務連絡が出されました。年額21,000円だった利用料は無料になります。最新の動きを含めて整理します。
まず「省令が認めているICT活用」を使い切る
新しいツールを検討する前に、法令上どこまでオンライン化が許されているかを確認しましょう。知らずに従来のやり方を続けている業務が意外に残っています。
モニタリングは条件付きでテレビ電話面接が可能
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)第13条第14号は、モニタリングについて少なくとも月1回利用者に面接し、居宅を訪問して行うことを原則としています。
ただし例外があります。テレビ電話装置等を活用して面接することについて文書により利用者の同意を得ており、かつサービス担当者会議等において、利用者の心身の状況が安定していること、利用者がテレビ電話装置等で意思疎通を行えること、テレビ電話では把握できない情報を担当者から提供を受けることについて主治の医師や担当者その他の関係者の合意を得ている場合には、少なくとも2か月に1回居宅を訪問して面接すれば、訪問しない月はテレビ電話装置等による面接が認められます。
移動時間が業務時間の大きな割合を占めるケアマネにとって、隔月訪問を可能にするこの規定の効果は小さくありません。ただし同意と合意という手続きが前提であり、勝手に切り替えることはできません。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
サービス担当者会議もテレビ電話で開催できる
同基準第13条第9号は、サービス担当者会議についてテレビ電話装置等を活用して行うことができると定めています。ただし利用者またはその家族が参加する場合には、活用について当該利用者等の同意を得なければならないとされています。
多職種の日程を物理的に合わせる負担は、ケアマネ業務のなかでも大きい部分です。オンライン開催を標準にするだけで、開催までのリードタイムが短縮されます。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
書類は電磁的記録・電磁的方法に置き換えられる
同基準第31条は、この省令で書面により行うことが規定または想定されているもののうち、作成・保存等については電磁的記録により行うことができるとしています。さらに交付、説明、同意、承諾等についても、相手方の承諾を得れば電磁的方法によることができると定めています。
「紙でなければならない」と思い込んで運用している書類が、実は電子化できるケースは珍しくありません。ICT導入の第一歩として、自事業所の書類を棚卸ししてみてください。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
ケアプランデータ連携システムが2027年1月に移行する
ケアマネのICT活用で最も直接的な影響があるのがこのシステムです。2026年7月に大きな変更が公表されており、対応が必要になります。
「介護WEBサービス」への移行は2027年1月予定
厚生労働省は令和8年7月29日付の事務連絡(介護保険最新情報Vol.1529)で、ケアプランデータ連携システムを「介護情報基盤」に統合し、介護保険資格確認等WEBサービス(介護WEBサービス)へ移行することを案内しました。移行時期は令和9年(2027年)1月が予定されています。
移行後は、クライアントソフトではなくWEBシステムの利用によってケアプランデータ連携機能が使えるようになります。端末ごとのインストール作業から解放される点は、小規模事業所ほど恩恵が大きいはずです。
出典:厚生労働省「ケアプランデータ連携システムの介護保険資格確認等WEBサービスへの移行について(介護保険最新情報Vol.1529)」https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0730092333872/ksvol.1529.pdf
利用料は年額21,000円から負担なしへ
見逃せないのが費用面です。同事務連絡では、介護WEBサービスの利用にあたって各介護事業所等に対し利用料などの直接の費用は求めないこととされています。
これまでケアプランデータ連携システムは年額21,000円の利用料が必要でしたが、移行後はケアプランデータの送受信が介護WEBサービスの一機能となるため、利用料の負担は発生しません。なおフリーパスキャンペーンの実施と延長により、令和8年度中はすでに利用料が無料とされています。導入コストを理由に見送ってきた事業所にとって、その理由はなくなりつつあります。
出典:厚生労働省「ケアプランデータ連携システムの介護保険資格確認等WEBサービスへの移行について(介護保険最新情報Vol.1529)」https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0730092333872/ksvol.1529.pdf
2026年7月から12月が「引っ越し準備期間」
移行にあたっては利用登録が必要です。すでに介護WEBサービスの利用登録を終えている場合は改めての登録は不要ですが、ケアプランデータ連携システムだけを導入している場合は登録が必要になります。いずれも導入していない場合は、両方の手続きが求められます。
事務連絡では2026年7月から12月までが引っ越し準備期間とされ、市町村の介護情報基盤への対応状況にかかわらず準備が必要とされています。統合直前はヘルプデスクの混雑が想定されるため、早めの登録が推奨されています。利用登録の所要時間は数分とされており、後回しにする理由はありません。
出典:厚生労働省「ケアプランデータ連携システムの介護保険資格確認等WEBサービスへの移行について(介護保険最新情報Vol.1529)」https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0730092333872/ksvol.1529.pdf
ICT活用は担当できる件数にも直結する
ICTの導入は業務を楽にするだけでなく、人員基準そのものを変える効果を持ちます。制度上の緩和規定を確認します。
担当上限が44人から49人に引き上げられる
同基準第2条第2項は、介護支援専門員の員数の基準について、利用者の数が44またはその端数を増すごとに1とすると定めています。
一方で同条第3項は、事業所が、公益社団法人国民健康保険中央会が運用および管理を行う、居宅サービス計画の情報の共有等のための情報処理システムを利用し、かつ事務職員を配置している場合には、その基準を利用者数49またはその端数を増すごとに1とすると定めています。条件は「システムの利用」と「事務職員の配置」の2つで、片方だけでは緩和されません。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
導入率はすでに5割を超えている
導入を迷っている事業所にとって参考になるのが普及状況です。独立行政法人福祉医療機構が公開しているケアプランデータ連携システムの利用状況では、2026年7月15日現在で101,227件の事業所が掲載されています。
厚生労働省の事務連絡に添付されたチラシでも、令和8年7月初旬時点の集計として有効ライセンス事業所の割合が5割を超えたことが示されています。「まだ一部の事業所だけ」という段階は過ぎており、連携先が導入していれば効果は即座に表れます。
出典:独立行政法人福祉医療機構「ケアプランデータ連携システム利用状況」https://www.wam.go.jp/wamappl/kpdrsys.nsf/top / 厚生労働省「ケアプランデータ連携システムの介護保険資格確認等WEBサービスへの移行について(介護保険最新情報Vol.1529)」https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0730092333872/ksvol.1529.pdf
導入費用には助成金が用意されている
初期費用が気になる場合は助成制度を確認してください。厚生労働省の事務連絡によれば、令和8年度の介護情報基盤の活用のための助成金の申請受付期間は令和8年5月7日から令和9年3月12日(予定)までとされています。
助成対象はカードリーダーの購入経費と、介護情報基盤との接続サポート等経費です。助成限度額は介護サービス種別に応じて設定されており、訪問・通所・短期滞在系は6.4万円まで、居住・入所系は5.5万円まで、その他は4.2万円までとされています。導入支援事業者から介護情報基盤とケアプランデータ連携システムの接続サポートを一体的に受ける場合、その費用も対象になります。
出典:厚生労働省「ケアプランデータ連携システムの介護保険資格確認等WEBサービスへの移行について(介護保険最新情報Vol.1529)」https://www.wam.go.jp/gyoseiShiryou-files/documents/2026/0730092333872/ksvol.1529.pdf
それでもICT化が進まない事業所で何ができるか
制度が整っても、実際に導入するかは事業所の判断に委ねられます。現場の担当者としてできることを整理します。
会議はオンライン開催を標準にする
同基準第21条の2は、感染症の予防およびまん延の防止のための対策を検討する委員会について、テレビ電話装置等を活用して行うことができるとしたうえで、おおむね6か月に1回以上開催することを求めています。同基準第27条の2も、虐待の防止のための委員会についてテレビ電話装置等の活用を認めたうえで定期的な開催を求めています。
大がかりなシステム導入と違い、こちらは合意さえ取れれば今日から変えられます。小さな成功体験を積むことが、事業所全体のICT化を進める足がかりになります。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
情報公開はすでに義務になっている
同基準第22条第3項は「原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない」と定めています。この規定には令和7年3月31日までの経過措置が設けられていましたが、その期間は既に終了しています。
紙の掲示だけで済ませている事業所は対応が漏れていないか確認してください。ICT化を先延ばしにしている事業所ほど、この対応も止まっている可能性があります。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
提案しても動かないなら、環境の問題
制度は整い、費用の壁も下がり、導入率も5割を超えました。それでも運用が変わらないのであれば、個人の努力で埋められる範囲を超えています。
同じ制度のもとでも、ICTを使い切っている事業所と手書き・FAXのままの事業所では、働き方がまったく異なります。資格の問題ではなく環境の問題として切り分けて考える視点も、長く働き続けるためには必要です。
ケアマネのICT活用についてよくある質問
現場で判断に迷いやすい点をまとめました。
モニタリングは毎月訪問しないといけませんか?
原則は月1回の居宅訪問による面接です。ただし文書による利用者の同意と、サービス担当者会議等での関係者の合意など所定の条件を満たせば、2か月に1回の訪問とし、訪問しない月はテレビ電話装置等による面接が認められます。
ケアプランデータ連携システムはいつ変わりますか?
介護情報基盤に統合され、介護保険資格確認等WEBサービスへ移行します。移行時期は令和9年(2027年)1月が予定されており、2026年7月から12月までが準備期間とされています。
移行後も利用料はかかりますか?
かかりません。介護WEBサービスの利用にあたって直接の費用は求めないこととされており、従来の年額21,000円の負担は発生しなくなります。令和8年度中もキャンペーンにより無料とされています。
すでに導入していれば手続きは不要ですか?
介護WEBサービスの利用登録を終えていれば改めての登録は不要です。ケアプランデータ連携システムのみを導入している場合は、介護WEBサービスへの利用登録が必要になります。
ICTを導入すると担当できる人数は増えますか?
増えます。国民健康保険中央会が運用管理する情報処理システムを利用し、かつ事務職員を配置している場合、介護支援専門員の員数の基準は利用者44人ごとから49人ごとに緩和されます。
導入費用の助成はありますか?
令和8年度の助成金の申請受付期間は令和8年5月7日から令和9年3月12日(予定)までとされています。カードリーダーの購入経費や接続サポート等経費が対象で、介護サービス種別に応じた助成限度額が設定されています。
ケアマネのICT活用についてのまとめ
ケアマネのICT活用は、ツール選びより先に省令が認めている運用を使い切ることから始まります。モニタリングの隔月訪問とテレビ電話の併用、担当者会議のオンライン開催、書類の電子化はいずれも条件付きで認められています。ケアプランデータ連携システムは2027年1月に介護WEBサービスへ移行し、利用料は無料になります。準備期間は2026年12月までです。まずは利用登録から着手してください。ません。

