ケアプランはAIで作成できる?任せてよい作業・任せてはいけない判断と、個人情報を守る使い方
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
「ケアプランの文章を考えるのに時間がかかる」「AIで作れるなら使ってみたい」と感じていませんか。国の検討会でも、計画書などの原案づくりに生成AIを活用する方向性が示され、AIは現実的な選択肢になりつつあります。ただし、AIに任せてよいのは下書きまでで、判断と責任はケアマネにあります。この記事では、AIでできること・できないこと、個人情報の注意点、始め方を解説します。
AIによるケアプラン作成とは
「AIでケアプランを作成する」といっても、使われている技術や仕組みにはいくつかの種類があります。まずは、AIがケアプラン作成のどの部分を手伝うのかと、国がどのような方向性を示しているのかを整理しましょう。
AIが手伝うのは「文章の下書き」と「情報の整理」
ケアプラン作成でのAI活用は、主にアセスメントの情報をもとに、生活全般の解決すべき課題、長期目標・短期目標、サービス内容などの文章案を示すものです。AIがケアプランを完成させるのではなく、ケアマネが一から文章を考える手間を減らし、見直しや修正に時間を使えるようにする道具だと考えると分かりやすいでしょう。
使われるAIには大きく3つのタイプがある
1つ目は、介護ソフトに組み込まれた文例提案機能です。2つ目は、ChatGPTなどの汎用的な生成AIに指示を入力して文章案を作る使い方です。3つ目は、過去のデータから状態の変化や必要なサービスを予測し、選択肢を示すタイプです。どのタイプも、最終的な内容はケアマネが判断して決める点は共通しています。
ケアプランデータ連携システムとの違い
ケアプランデータ連携システムは、居宅介護支援事業所とサービス事業所の間で、ケアプランや利用実績のデータをやり取りするための仕組みです。AIのように文章を作るものではありませんが、紙やFAXでのやり取りを減らせるため、AIによる作成支援と組み合わせると、ケアプランの作成から共有までの負担をまとめて軽くできます。
このシステムは2027年1月に介護保険資格確認等WEBサービスへ移行する予定です。移行後は専用のクライアントソフトを入れずにWEB上で利用でき、これまで年額21,000円だった利用料もかからなくなります。 (出典:厚生労働省「ケアプランデータ連携システムの介護保険資格確認等WEBサービスへの移行について(介護保険最新情報Vol.1529)」https://www.mhlw.go.jp/content/001730882.pdf )
国の検討会も原案作成への生成AI活用に言及
厚生労働省の「2040年に向けたサービス提供体制等のあり方」検討会は、2025年4月の中間とりまとめで、計画書やサービス担当者会議の議事録の原案を生成AIで作成することは業務効率化に資すると示しました。あわせて、AIの信頼性やセキュリティの問題があることにも触れたうえで、AIによるケアプランの作成支援をはじめ、AI技術をどのように現場に組み込むかの検討が必要だとしています。 (出典:厚生労働省「介護保険最新情報Vol.1373(2040年に向けたサービス提供体制等のあり方に関する中間とりまとめ)」https://www.mhlw.go.jp/content/001474853.pdf )
AIに任せてよい作業・任せてはいけない判断
AIを上手に使うコツは、AIが得意なことと、ケアマネにしかできないことをはっきり分けることです。ここでは、業務の場面ごとにAIに任せられる範囲と、人が必ず担うべき判断を整理します。
任せてよい作業:文例づくりと言い換え
ニーズや目標の表現は、専門用語が多くなったり、毎回同じ言い回しになったりしがちです。AIに「利用者本人の言葉を生かした表現に言い換えて」「専門用語を家族にも分かる言葉にして」と指示すると、複数の文例を短時間で得られます。表現の選択肢を広げる使い方は、AIが最も力を発揮する場面です。
任せてよい作業:アセスメント情報の整理
聞き取った内容を課題分析の項目ごとに振り分けたり、複数回の訪問記録から変化した点を抜き出したりする作業も、AIが手伝える分野です。情報が整理されることで、どこに課題があるのかを考える時間を確保しやすくなります。ただし、整理された内容に抜けや誤りがないかは、必ず自分の記録と照らし合わせて確認しましょう。
任せてよい作業:記録や議事録の整理
訪問時のメモや音声入力した内容を、支援経過記録の形に整える作業や、サービス担当者会議の発言内容を要点ごとにまとめる作業も、AIが得意とする分野です。記録にかかる時間が減れば、訪問や関係者との調整に時間を使えます。
任せてはいけない判断:本人の意向とアセスメントの解釈
利用者の表情や言葉の裏にある思い、家族との関係性、住まいの状況などは、実際に会って話を聞いたケアマネでなければ読み取れません。AIは入力された情報をもとに文章を作るため、アセスメントが不十分であれば、もっともらしいが本人に合わないケアプランになってしまいます。
任せてはいけない判断:サービス内容の決定と説明
どのサービスを、どの事業所で、どれくらい利用するかは、本人や家族の同意、サービス担当者会議での検討を経て決まります。AIの提案をそのまま採用するのではなく、根拠を自分の言葉で説明できる内容かどうかを必ず確認しましょう。
任せてはいけない判断:モニタリングでの変化の見極め
モニタリングでは、表情や住まいの様子、家族の疲れ具合など、数値や文章に表れにくい変化に気づくことが重要です。AIは入力された記録をもとに判断するため、記録に残っていない小さな変化には気づけません。ケアプランを見直すかどうかの判断は、訪問で得た実感と専門職としての見立てをもとに、ケアマネ自身が行う必要があります。
AIを使うときに必ず守りたい3つの注意点
ケアプランには、利用者の心身の状態や家族の事情など、特に慎重に扱うべき個人情報が多く含まれます。便利さだけで使い始めると、情報漏えいや誤った支援につながりかねません。導入前に次の3点を確認しましょう。
注意点1:個人を特定できる情報を入力しない
汎用的な生成AIを使う場合は、利用者の氏名、住所、生年月日、被保険者番号などの個人を特定できる情報を入力しないことが原則です。入力した内容がAIの学習に利用されない設定になっているか、事業所として契約したサービスかどうかも確認が必要です。介護事業者は、個人情報保護法令や「医療・介護関係事業者における個人情報の適切な取扱いのためのガイダンス」に沿って情報を扱うことが求められています。
注意点2:もっともらしい誤りを見逃さない
生成AIは、事実と異なる内容や、制度上認められていないサービスの使い方を、自然な文章で示すことがあります。介護保険制度の算定要件や、利用者の疾患に関する注意点などは、AIの回答をうのみにせず、必ず一次情報や主治医の意見と照らし合わせて確認しましょう。
注意点3:どのケアプランも同じ文章にならないようにする
AIが示す文例は、一般的で当たり障りのない表現になりやすい傾向があります。そのまま使うと、利用者ごとの違いが見えない画一的なケアプランになりかねません。本人がよく口にする言葉や、大切にしている生活習慣などを加えて、その人らしさが伝わる内容に仕上げることが大切です。
注意点4:事業所内で使い方を共有し、記録に残す
AIを使う職員と使わない職員が混在すると、ケアプランの質や情報管理の水準にばらつきが出ます。どの業務にAIを使ったのか、どのように確認したのかを事業所内で共有し、必要に応じて記録に残しておくと、運営指導や利用者からの問い合わせにも落ち着いて対応できます。
ケアプラン作成にAIを取り入れる始め方
AIの活用は、いきなり事業所全体で導入するより、小さく試して効果と課題を確かめながら広げる方が失敗しにくくなります。ここでは、個人で始められることと、事業所として決めておきたいことを順番に紹介します。
ステップ1:個人情報を含まない作業から試す
まずは、架空の事例や一般的な状態像をもとに、目標の文例を複数出してもらう、専門用語を分かりやすく言い換えてもらうといった、個人情報を含まない作業から試してみましょう。どのような指示を出すと使いやすい文章が返ってくるかを、自分なりにつかむことができます。
ステップ2:事業所で利用ルールを決める
実際の利用者の情報を扱う段階に進む前に、使ってよいツール、入力してはいけない情報、AIが作った文章を確認する手順などを、事業所のルールとして文書にしておきましょう。職員ごとに使い方がばらばらになると、情報管理のリスクが高まります。
ステップ3:介護ソフトの機能やデータ連携と組み合わせる
すでに使っている介護ソフトに文例提案などのAI機能がある場合は、情報が事業所の管理下にとどまるため、汎用的な生成AIより安全に使いやすくなります。あわせて、サービス事業所とのケアプランのやり取りをデータで行うケアプランデータ連携システムを活用すると、作成から共有までの手間をまとめて減らせます。
ステップ4:かかった時間と質を振り返る
一定期間使ってみたら、ケアプラン作成にかかる時間がどれだけ減ったか、内容の質に問題がなかったかを振り返りましょう。効果が確認できた作業から範囲を広げていくことで、無理なくAIを業務に定着させられます。
費用は「減った時間」で判断する
介護ソフトのAI機能や有料の生成AIサービスには費用がかかります。導入を判断する際は、月額費用だけでなく、記録やケアプラン作成にかかる時間がどれだけ減るか、その時間を訪問や相談対応、残業の削減にどう使えるかをあわせて考えましょう。職員1人あたりの削減時間を試算すると、管理者にも導入の効果を説明しやすくなります。
ケアプランのAI作成についてのよくある質問
Q. AIが作ったケアプランをそのまま使ってもよいですか?
そのまま使うことはおすすめしません。AIが示すのはあくまで文章案です。アセスメントの内容や本人・家族の意向と合っているかを確認し、ケアマネが責任を持って内容を決める必要があります。
Q. 無料の生成AIに利用者の情報を入力してもよいですか?
個人を特定できる情報は入力しないのが原則です。入力内容が学習に使われない設定か、事業所として利用が認められたサービスかを確認し、事業所のルールに従って使いましょう。
Q. AIを使うとケアマネの仕事はなくなりますか?
なくなるとは考えにくいでしょう。AIが得意なのは文章の作成や情報の整理です。本人の思いを聞き取り、関係者と調整し、支援の方向性を決める役割は、引き続きケアマネが担います。
Q. AIでケアプランを作成したことを利用者に説明する必要はありますか?
AIの使用自体を説明する義務が一律に定められているわけではありません。ただし、内容はケアマネが確認して決めたものであることを前提に、利用者や家族から質問があれば丁寧に説明できるようにしておきましょう。
Q. パソコンが苦手でもAIは使えますか?
使えます。スマートフォンの音声入力でメモを残し、それを文章に整えてもらうなど、キーボード操作が少ない使い方もあります。まずは個人情報を含まない簡単な作業から試してみましょう。
ケアプランのAI作成についてのまとめ
ケアプランのAI作成は、文章の下書きや記録の整理を効率化する有効な手段で、国の検討会でも原案作成への活用が示されています。一方で、本人の意向の読み取りやサービス内容の決定はケアマネにしかできません。個人情報を入力しない、誤りを確認する、画一的な文章にしないという3点を守り、小さく試しながら業務に取り入れていきましょう。択肢も検討しましょう。

