試験資格

ケアマネ試験はなぜ難しい?合格率では見えない「2分野の壁」の正体

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監修者

名前 / Name  
大石 智之

実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。

その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。

さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。

約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。

設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。

現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。

ケアマネ試験は「介護系で最難関」と語られる一方、合格率は30%を超える年もあります。この振れ幅の正体は、合格基準の設計と受験資格の厳しさにあります。2つの分野それぞれで基準点を超えなければならず、そもそも受験できる人が実務経験5年以上に限られているためです。公的資料をもとに、難易度の中身を構造から分解して整理します。


ケアマネ試験の難易度は「合格基準の設計」に表れる

難易度を語るとき、合格率だけを見ても本質はつかめません。どういう条件を満たせば合格になるのか、その設計を確認すると、この試験特有の厳しさが見えてきます。

全60問、1問1点、2つの分野で構成される

ケアマネ試験(介護支援専門員実務研修受講試験)は、「介護支援分野」と「保健医療福祉サービス分野」の2分野から出題されます。配点は1問1点です。

試験問題と合格基準は、介護保険法第69条の11第1項に規定する登録試験問題作成機関である公益財団法人社会福祉振興・試験センターが作成・決定しており、各都道府県共通の問題および基準となっています。都道府県ごとに難易度が変わるわけではなく、全国同一の土俵で判定される試験です。

出典:東京都福祉保健局「令和4年度(第25回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験に係る正答番号及び合格基準の公表について」

「2分野それぞれで基準点を超える」必要がある

ここがこの試験の最大の特徴です。合格基準は、介護支援分野、保健医療福祉サービス分野ごとに正答率70%を基準とし、問題の難易度で補正して設定されます。そして、それぞれの得点が基準に達している者を合格とすると定められています。

つまり総合点でいくら稼いでも、片方の分野が基準に届かなければ不合格です。得意分野で失点をカバーするという戦略が使えません。苦手分野を放置したまま総得点を積み上げる勉強法が通用しない点が、体感的な難しさを押し上げています。

出典:東京都福祉局「令和7年度(第28回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験に係る正答番号及び合格基準の公表について」
https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shikaku/r7_seitoukijyun

他の福祉系国家試験と基準の考え方が違う

比較すると設計の違いがはっきりします。第38回介護福祉士国家試験の合格基準は、総得点125点に対し64点以上(総得点の60%程度を基準とし、問題の難易度で補正)で、加えて11の試験科目群すべてで得点があることとされています。第38回社会福祉士国家試験も、総得点129点に対し50点以上(60%程度を基準に補正)という設計です。

試験基準となる正答率分野・科目の条件
ケアマネ試験各分野70%を基準に補正2分野それぞれで基準点以上
介護福祉士国家試験(第38回)総得点の60%程度を基準に補正11科目群すべてで得点があること
社会福祉士国家試験(第38回)総得点の60%程度を基準に補正指定の科目群すべてで得点があること

介護福祉士や社会福祉士が「0点の科目群を作らない」ことを条件としているのに対し、ケアマネ試験は各分野で70%という高い水準の到達を求めています。求められる完成度が構造的に高い試験だといえます。

出典:厚生労働省「第38回介護福祉士国家試験の合格基準及び正答について」https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/001669883.pdf / 厚生労働省「第38回社会福祉士国家試験の合格基準及び正答について」https://www.mhlw.go.jp/content/12004000/001660620.pdf


数字で見る難易度:合格率は10%台から40%台まで動く

合格基準が毎年補正されるため、合格率は年によって大きく変動します。過去の実績を確認して、どの水準を想定して準備すべきかを考えます。

直近の第28回は25.6%

第28回介護支援専門員実務研修受講試験は令和7年10月12日に実施され、受験者数50,601人に対し合格者数12,961人、合格率は25.6%でした。おおむね4人に1人が合格した計算です。

前年の第27回(令和6年度)は受験者53,699人に対し合格者17,228人で32.1%でしたので、1年で6.5ポイント下がったことになります。受験者数は約3,000人減にとどまる一方、合格者数は4,000人以上減っており、その年の出題との相性が結果を左右していることがうかがえます。

出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html

過去最低は10.1%、最高は44.1%

第1回(平成10年度)は受験者207,080人に対し合格者91,269人で合格率44.1%でした。制度立ち上げ期の数字です。その後は段階的に下がり、第19回(平成28年度)で13.1%、第21回(平成30年度)では10.1%と過去最低を記録しています。

第21回は受験資格が見直された最初の年で、受験者数も前年の131,560人から49,332人へ激減しました。母集団が大きく入れ替わったにもかかわらず合格率が10%台まで落ちた事実は、受験資格が厳しくなっても試験が易しくなるわけではないことを示しています。

出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html

直近5年はおおむね17%〜32%

受験資格見直し後の推移を見ると、第23回(令和2年度)17.7%、第24回(令和3年度)23.3%、第25回(令和4年度)19.0%、第26回(令和5年度)21.0%、第27回(令和6年度)32.1%、第28回(令和7年度)25.6%となっています。

回(年度)受験者数合格者数合格率
第23回(令和2年度)46,415人8,200人17.7%
第24回(令和3年度)54,290人12,662人23.3%
第25回(令和4年度)54,406人10,328人19.0%
第26回(令和5年度)56,494人11,844人21.0%
第27回(令和6年度)53,699人17,228人32.1%
第28回(令和7年度)50,601人12,961人25.6%

ここから導ける実務的な結論は明快です。受験する年を選べない以上、「合格率20%前後の年に当たっても通過できる水準」を目標に据える必要があります。

出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html


難易度を押し上げている3つの構造的な要因

合格率という数字の裏には、この試験特有の条件があります。単純に他の資格試験と比較できない理由を整理します。

受験者はすでに選抜されている

ケアマネ試験は誰でも受けられる試験ではありません。介護保険法施行規則第113条の2に定める法定資格に基づく業務、または指定された相談援助業務に、通算5年以上かつ900日以上従事していることが必要です。かつて存在した介護等業務10年のルートは平成30年度試験から廃止されています。

つまり受験者は全員、現場で5年以上のキャリアを積んだ実務者です。学生や未経験者が含まれる試験とは母集団の質が異なります。その中での25.6%であることを踏まえると、体感的な難易度は数字以上と考えたほうが安全です。

出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2 地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf

受験機会は年1回だけ

試験は毎年10月の日曜日に全国一斉で実施されます。第29回試験は2026年10月11日(日)実施で、申込受付はすでに終了しています。次の機会は2027年(第30回)です。

不合格になれば次のチャンスは1年後になります。受験手数料も都道府県ごとに必要で、たとえば大阪府では13,400円(別途払込手数料)です。年1回という制約が、心理的なプレッシャーとして難易度を押し上げる側面もあります。

出典:大阪府「第29回大阪府介護支援専門員実務研修受講試験のお知らせ」https://www.pref.osaka.lg.jp/o090100/kaigoshien/care/shiken03.html

働きながら準備する前提になる

受験資格の要件上、受験者のほとんどは現役で働いています。第28回の職種別合格者では介護福祉士が8,310人で64.1%、看護師・准看護師が2,094人で16.2%を占めており、シフト勤務や夜勤を抱えた層が中心です。

学習時間をまとまって確保できない条件下で、2分野それぞれ70%水準に仕上げる必要があります。試験内容そのものの難しさに加えて、この準備環境の厳しさが難易度の実感を形づくっています。

出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html


難易度を踏まえた現実的な合格戦略

構造が分かれば、対策の優先順位も決まります。この試験で結果を出すために押さえるべき考え方を整理します。

介護支援分野を後回しにしない

2分野それぞれで基準点を超える必要がある以上、どちらか一方を捨てる戦略は成立しません。特に介護支援分野は問題数が保健医療福祉サービス分野より少なく、1問の重みが相対的に大きくなります。取りこぼしが基準割れに直結しやすい構造です。

保健医療福祉サービス分野は自分の職種と重なる範囲があり、得点しやすいと感じる人もいます。しかしそこで稼いだ分を介護支援分野の不足に充てることはできません。時間配分は「苦手な分野に厚く」が原則です。

「合格率20%の年でも通る水準」を目標にする

合格基準は毎年補正され、合格率は自分の努力とは無関係に動きます。だからこそ、合格率が高い年を狙うという発想は成立しません。

一方で、合格率が10%台に落ちた年でも数千人から1万人以上が合格しているという事実は、難しい年でも通過できる層が確実に存在することを意味します。目指すべきはその層に入ることであり、平均的な受験者と同じ準備量では届きません。過去問で安定して基準点を上回る状態をつくることが、変動への唯一の備えになります。

合格後の87時間研修まで含めて計画する

合格はゴールではありません。合格後は都道府県が実施する介護支援専門員実務研修(87時間以上)を修了し、資格登録を経て介護支援専門員証の交付を受けて、はじめてケアマネとして働けます。

講義と演習で構成され、平日日中の日程が組まれることも多いため、勤務先との調整が必要です。合格発表から研修開始まで時間の余裕は多くありません。受験を決めた段階で、合格後の研修期間をどう確保するかまで想定しておくと、その後の動きがスムーズになります。

出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2 地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf


ケアマネ試験の難易度についてよくある質問

難易度の見方について、特に問い合わせが多い点をまとめました。

ケアマネ試験の難易度はどのくらいですか?

直近の第28回の合格率は25.6%で、おおむね4人に1人が合格しています。ただし受験資格として実務経験5年以上が求められており、受験者はすでに現場経験者に絞られています。その中での25.6%であることを踏まえる必要があります。

合格基準は何点ですか?

固定の点数ではありません。介護支援分野、保健医療福祉サービス分野それぞれについて正答率70%を基準とし、問題の難易度で補正して設定されます。両方の分野で基準点に達した者が合格です。

片方の分野で高得点なら合格できますか?

できません。2つの分野それぞれで基準点に達している必要があります。総得点が高くても、片方が基準に届かなければ不合格です。

介護福祉士の試験と比べて難しいですか?

合格基準の設計が異なります。第38回介護福祉士国家試験は総得点125点に対し64点以上(総得点の60%程度を基準に補正)で、11科目群すべてで得点があることが条件でした。ケアマネ試験は各分野70%を基準とするため、求められる完成度は構造的に高くなっています。

独学でも合格できますか?

第28回だけで12,961人が合格しており、学習方法は人それぞれです。ただし2分野それぞれで基準点を超える必要があるため、苦手分野を放置できない点は共通します。過去問で両分野とも安定して基準を上回る状態をつくれるかが判断基準になります。

難易度は今後下がりますか?

合格基準は毎年の問題の難易度で補正されるため、年ごとに合格率は変動します。第27回32.1%から第28回25.6%のように1年で6ポイント以上動くこともあり、受験する年を選ぶことはできません。変動を前提に準備するのが現実的です。


ケアマネ試験の難易度についてのまとめ

ケアマネ試験の難易度は、合格率25.6%という数字だけでは測れません。2つの分野それぞれで正答率70%を基準とした水準に到達する必要があり、苦手分野を得意分野で補えない設計になっています。加えて受験資格として実務経験5年以上が求められ、受験者はすでに現場経験者に限られています。目標は「合格率20%前後の年でも通過できる水準」です。年1回の試験だからこそ、一度で決める前提で準備を進めましょう。。す。自分の勤務日数を数えるところから始めましょう。


執筆者
ケアマネクスト編集部
ケアマネクスト編集部
ケアマネとして働く方のキャリアの「次」と、事業所のこれからの「次」。
その両方の後押しになるよう、試験や制度、働き方、事業承継の情報をお届けしています。
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