ケアマネの業務効率化、実は省令が認めている。隔月訪問もオンライン会議も
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
ケアマネの業務効率化というと、ツール導入の話になりがちです。しかし実際には、省令が既に認めている効率化を使い切れていない事業所が少なくありません。モニタリングのオンライン実施、会議のテレビ電話開催、書類の電子化。いずれも条件を満たせば正式に認められています。この記事では厚生労働省令の条文をもとに、今日から使える効率化を整理します。
まず「省令が認めている効率化」を確認する
ツールを検討する前に、法令上どこまで簡略化が許されているかを把握しておくべきです。知らずに従来のやり方を続けている業務が、意外に多く残っています。
モニタリングは条件付きでオンライン面接が可能
「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準」(平成11年厚生省令第38号)第13条第14号は、モニタリングについて少なくとも1か月に1回利用者に面接し、居宅を訪問して行うことを原則としています。
ただし例外が置かれています。テレビ電話装置等を活用して面接を行うことについて文書により利用者の同意を得ており、かつサービス担当者会議等において、利用者の心身の状況が安定していること、利用者がテレビ電話装置等で意思疎通を行えること、テレビ電話では把握できない情報を担当者から提供を受けることについて主治の医師や担当者その他の関係者の合意を得ている場合には、少なくとも2か月に1回居宅を訪問して面接すれば、訪問しない月はテレビ電話装置等による面接が認められます。
移動時間が業務時間の大きな割合を占めるケアマネにとって、隔月の訪問を可能にするこの規定の効果は小さくありません。ただし同意と合意という手続きが前提であり、勝手に切り替えることはできない点に注意してください。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
サービス担当者会議もテレビ電話で開催できる
同基準第13条第9号は、サービス担当者会議についてテレビ電話装置等を活用して行うことができると定めています。ただし利用者またはその家族が参加する場合には、テレビ電話装置等の活用について当該利用者等の同意を得なければならないとされています。
多職種の日程を物理的に合わせる負担は、ケアマネ業務のなかでも大きい部分です。オンライン開催を標準にするだけで、開催までのリードタイムが短縮されます。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
書面は電磁的記録・電磁的方法に置き換えられる
同基準第31条は、この省令で書面により行うことが規定または想定されているもののうち、作成・保存等については電磁的記録により行うことができるとしています。さらに交付、説明、同意、承諾等についても、相手方の承諾を得れば電磁的方法によることができると定めています。
「紙でなければならない」と思い込んで運用している書類が、実は電子化できるケースは珍しくありません。まずは自事業所の書類を棚卸しし、紙のまま残す必然性があるかを確認してみてください。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
担当上限を44人から49人に引き上げる仕組み
効率化は業務を減らすだけでなく、同じ人員で扱える件数を増やす方向でも設計されています。省令が用意している緩和規定を確認します。
原則は「利用者44人ごとに1人」
同基準第2条第2項は、介護支援専門員の員数の基準について、利用者の数が44またはその端数を増すごとに1とすると定めています。介護予防支援を行う場合は、その利用者数に3分の1を乗じた数を加えて計算します。
この基準が、事業所の受け入れ可能件数を実質的に決めています。人を増やさずに件数を増やしたい場合、この上限が壁になります。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
2つの条件で49人に緩和される
同条第3項は、事業所が、公益社団法人国民健康保険中央会が運用および管理を行う、指定居宅介護支援事業者および指定居宅サービス事業者等の使用に係る電子計算機と接続された居宅サービス計画の情報の共有等のための情報処理システムを利用し、かつ事務職員を配置している場合には、員数の基準を利用者数49またはその端数を増すごとに1とすると定めています。
条件は「システムの利用」と「事務職員の配置」の2つで、片方だけでは緩和されません。逆に言えば、この2つを揃えれば1人あたり5人分の余裕が生まれます。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
導入判断は「人件費と件数」の比較で行う
事務職員の配置には人件費が伴います。緩和によって増える件数分の収入と、その人件費を比較して判断する必要があります。
ただし、事務職員の効果は上限の緩和だけではありません。ケアマネが担っていた電話対応、書類の準備、請求関連の作業を移管できれば、ケアマネ自身が利用者に向き合う時間が増えます。上限5人分という数字だけで判断すると、この副次的な効果を見落とすことになります。
会議・記録・情報公開の運用を軽くする
効率化の余地は日常の運用にも残っています。義務として求められている事項を、認められた方法で軽くする視点を持ちましょう。
各種委員会はテレビ電話等で開催できる
同基準第21条の2は、感染症の予防およびまん延の防止のための対策を検討する委員会について、テレビ電話装置等を活用して行うことができるとしたうえで、おおむね6か月に1回以上開催することを求めています。
同基準第27条の2も、虐待の防止のための対策を検討する委員会について、テレビ電話装置等を活用して行うことができるとしたうえで定期的な開催を求めています。あわせて指針の整備、研修の定期的な実施、担当者の設置が定められています。
全員を同じ場所に集める必要はありません。オンラインでの開催を前提に年間の開催計画を組めば、調整の負担は大きく下がります。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
記録の保存期間は「完結の日から2年間」
同基準第29条第2項は、指定居宅サービス事業者等との連絡調整に関する記録、居宅介護支援台帳(居宅サービス計画、アセスメントの結果の記録、サービス担当者会議等の記録、モニタリングの結果の記録)、身体的拘束等の記録、市町村への通知に係る記録、苦情の内容等の記録、事故の状況等の記録を整備し、その完結の日から2年間保存しなければならないと定めています。
保存すべき範囲と期間が明確である以上、それを超えて紙の書類を抱え込む必要はありません。前述のとおり保存は電磁的記録によることができるため、書庫を圧迫している過去分から電子化を進めるのが現実的です。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
重要事項のウェブサイト掲載は原則義務
効率化とあわせて対応が必要なのが情報公開です。同基準第22条第3項は「原則として、重要事項をウェブサイトに掲載しなければならない」と定めています。この規定には令和7年3月31日までの経過措置が設けられていましたが、その期間は既に終了しています。
紙の掲示だけで済ませている事業所は、対応が漏れていないか確認してください。掲載を整えておけば、問い合わせ対応の手間が減るという副次的な効果もあります。
出典:厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
制度改正で減る負担と、残る負担
効率化は事業所の努力だけの話ではありません。制度側でも負担軽減が進んでおり、あわせて押さえておくと今後の見通しが立てやすくなります。
更新研修の廃止で「数十時間」の負担がなくなる
2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)により、介護支援専門員証の有効期間と、その交付・更新を受けるために受講することとされていた研修が廃止されます。
現行の更新研修は都道府県が時間数を定めており、たとえば千葉県では専門研修課程Ⅰが56時間以上、課程Ⅱが32時間以上、実務未経験者向けの更新研修が54時間以上と案内されています。この負担が構造的に解消されることになります。ただし施行は公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内で政令が定める日であり、それまでは現行制度が有効です。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf / 千葉県「介護支援専門員(ケアマネジャー)の研修について」https://www.pref.chiba.lg.jp/koufuku/kaigohoken/senmonin/kaigoshien/koushinkensyu.html
研修受講は義務化され、事業者にも責任が生じる
同時に、厚生労働省令で定める者を除く介護支援専門員は、都道府県知事が行う研修を受けるものとされました。正当な理由なく受けない場合は受講命令が出され、従わなければ1年以内の期間を定めて業務を禁止することができるとされています。
さらに事業者側にも、雇用しているケアマネの研修の受講機会を確保する措置をとる義務が課され、怠れば勧告や公表の対象となります。なお現行の省令でも第19条第3項が、事業者は介護支援専門員の資質の向上のためにその研修の機会を確保しなければならないと定めています。「業務が回らないから研修に行けない」という状態は、効率化で解消すべき課題として明確に位置づけられたことになります。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf / 厚生労働省「指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準(平成11年厚生省令第38号)」https://www.mhlw.go.jp/web/t_doc?dataId=82999405&dataType=0&pageNo=1
効率化しても変わらないなら、環境を見直す
省令が認めている効率化には限度があり、最終的にそれを実行するかどうかは事業所の判断に委ねられています。オンラインモニタリングの同意手続きを整えるのか、事務職員を配置するのか、書類を電子化するのか。同じ制度のもとでも、事業所によって働き方は大きく変わります。
制度上できることを提案しても運用が変わらない場合、個人の努力で埋められる範囲を超えています。資格の問題ではなく環境の問題として切り分けて考える視点も、長く働き続けるためには必要です。
ケアマネの業務効率化についてよくある質問
現場で判断に迷いやすい点をまとめました。
モニタリングは毎月訪問しなければいけませんか?
原則は月1回の居宅訪問による面接です。ただし文書による利用者の同意と、サービス担当者会議等での関係者の合意など所定の条件を満たせば、2か月に1回の訪問とし、訪問しない月はテレビ電話装置等による面接が認められます。
サービス担当者会議はオンラインでもよいですか?
テレビ電話装置等を活用して行うことができると定められています。ただし利用者またはその家族が参加する場合は、活用について当該利用者等の同意が必要です。
書類を電子化してよいのですか?
省令で書面によることが規定・想定されているもののうち、作成・保存等は電磁的記録によることができます。交付・説明・同意等も、相手方の承諾を得れば電磁的方法によることが可能です。
担当できる利用者は何人までですか?
員数の基準は利用者の数が44またはその端数を増すごとに1です。国民健康保険中央会が運用管理する情報処理システムを利用し、かつ事務職員を配置している場合は49ごとに1となります。
記録はいつまで保管が必要ですか?
居宅介護支援台帳や連絡調整の記録、苦情・事故の記録などは、その完結の日から2年間保存しなければならないと定められています。
感染症や虐待防止の委員会は毎回集まる必要がありますか?
いずれもテレビ電話装置等を活用して行うことができます。感染症の委員会はおおむね6か月に1回以上、虐待防止の委員会は定期的な開催が求められています。
ケアマネの業務効率化についてのまとめ
ケアマネの業務効率化は、ツール導入より先に省令が認めている運用を使い切ることから始まります。モニタリングは条件を満たせば隔月訪問とテレビ電話の併用が可能で、サービス担当者会議や各種委員会もオンラインで開催できます。書類の作成・保存・交付も電子化が認められています。データ連携システムと事務職員を揃えれば、担当上限は44人から49人に引き上げられます。まずは自事業所の運用と条文を突き合わせてみてください。逆算が欠かせません。

