ケアマネ独学のテキスト選び|「出題基準に準拠」を基準に選ぶ3種類の教材
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
ケアマネ試験を独学で目指すとき、最初の分かれ道がテキスト選びです。書店には多くの対策本が並びますが、選ぶ基準を「読みやすさ」に置くと危険です。この試験は問題も合格基準も全国共通で、出題基準に準拠しているかどうかが学習効率を左右します。この記事では公的情報をもとに、揃えるべき教材の種類と、避けるべき教材の見分け方を整理します。
テキスト選びの基準は「出題基準への準拠」
教材を比較する前に、この試験がどういう仕組みで作られているかを知っておく必要があります。出題の作られ方が分かると、選ぶべき軸が明確になります。
問題も合格基準も全国共通で作られている
ケアマネ試験の試験問題と合格基準は、介護保険法第69条の11第1項に規定する登録試験問題作成機関である公益財団法人社会福祉振興・試験センターが作成・決定しており、各都道府県共通の問題および基準となっています。
受験地によって出題が変わることはありません。したがって「自分の県に合った教材」を探す必要はなく、全国共通の出題基準にどれだけ忠実かという一点で比較できます。
出典:東京都福祉局「令和7年度(第28回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験に係る正答番号及び合格基準の公表について」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shikaku/r7_seitoukijyun
出題基準に準拠した基本テキストが存在する
独学者に見落とされがちなのが、実務研修等で使われる基本テキストの存在です。一般財団法人長寿社会開発センターが発行する『介護支援専門員基本テキスト』は、介護支援専門員実務研修受講試験の出題基準に準拠した構成とされており、上巻が介護保険制度・ケアマネジメント・介護保険サービス、下巻が高齢者保健医療・福祉の基礎知識という2巻構成です。十訂版は令和6年6月に発行されています。
分量が多く通読向きではありませんが、市販の対策本がどこを要約しているのかを確認する「原典」として持っておく価値があります。特に介護支援分野で答えの根拠が曖昧なとき、立ち返る先があるかどうかで理解の深さが変わります。
出典:一般財団法人長寿社会開発センター「[十訂]介護支援専門員基本テキスト」https://nenrin.or.jp/publishing/caremanager_1.html
「わかりやすさ」を優先すると落とし穴がある
要点を絞った薄い対策本は取り組みやすい一方、削られた部分から出題されると対応できません。合格基準は介護支援分野と保健医療福祉サービス分野それぞれについて正答率70%を基準に設定され、両方の分野で到達する必要があります。片方を得意分野で補えないため、網羅性の欠けた教材はリスクになります。
読みやすさは継続のために重要ですが、それは網羅性を確保したうえでの話です。「薄い1冊だけ」で完結させる設計は、この試験の合格基準と相性が良くありません。
出典:東京都福祉局「令和7年度(第28回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験に係る正答番号及び合格基準の公表について」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shikaku/r7_seitoukijyun
独学で最優先に揃えるべき3種類の教材
揃えるべきものは、実は多くありません。役割の異なる3種類を組み合わせるのが、独学の基本構成です。
1つ目:出題基準に準拠したメインテキスト
学習の軸となる1冊です。基本テキストそのものでも、それに準拠した市販の対策本でも構いませんが、介護支援分野と保健医療福祉サービス分野の両方を扱っていることが最低条件になります。
複数冊を並行して使うのは非効率です。情報が分散し、どこまで理解したかの把握も難しくなります。メインを1つに決め、他は補助として位置づけてください。
2つ目:過去問(都道府県が無料で公開している)
意外と知られていませんが、試験問題や正答番号、合格基準は都道府県が公表しています。たとえば東京都は、正答番号および合格基準とあわせて試験問題そのものをPDFで公開しています。
市販の問題集は解説が充実している一方、掲載順や表記が編集されています。本番の問題冊子と同じ形式で解いておくことは、時間配分の感覚をつかむうえで有効です。解説が必要な段階では市販の問題集を、仕上げの段階では公式に公開されている問題を、と使い分けると無駄がありません。
出典:東京都福祉局「令和7年度(第28回)東京都介護支援専門員実務研修受講試験に係る正答番号及び合格基準の公表について」https://www.fukushi.metro.tokyo.lg.jp/kourei/shikaku/r7_seitoukijyun
3つ目:制度改正を確認する一次情報
ケアマネ試験は介護保険制度が出題の中心にあるため、制度改正の影響を直接受けます。改正が続く分野では、教材の記述と現行制度が食い違うことがあります。
たとえば2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)では、介護支援専門員証の有効期間と、その交付・更新のために受講することとされていた研修の廃止が定められました。こうした動きは厚生労働省が発出する通知や審議会資料で確認するのが確実です。教材の版が古い場合の補正手段として、一次情報を確認する習慣を持っておいてください。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
選んではいけないテキストの見分け方
教材選びの失敗は、学習時間そのものを無駄にします。購入前に確認すべきポイントを整理します。
発行年と対応している改正年を必ず確認する
最初に見るべきは奥付の発行年と、「どの改正に対応しているか」の記載です。介護保険制度は3年ごとの報酬改定に加え、法改正も断続的に行われています。数年前の版では、現行と異なる記述が残っている可能性があります。
基本テキストも改訂が重ねられており、十訂版は令和6年6月発行です。中古で安く入手できる旧版は、価格差以上のリスクを抱えていると考えたほうが安全です。
出典:一般財団法人長寿社会開発センター「[十訂]介護支援専門員基本テキスト」https://nenrin.or.jp/publishing/caremanager_1.html
2つの分野を両方カバーしているか
合格には介護支援分野と保健医療福祉サービス分野の両方で基準点を超える必要があります。どちらか一方に特化した教材だけで学習を完結させることはできません。
特に注意したいのが、自分の職種と重なる分野に偏った教材選びです。第28回の合格者は介護福祉士が64.1%、看護師・准看護師が16.2%、社会福祉士が6.6%と多様な職種で構成されており、どの職種にも専門外の領域が必ず存在します。手薄な分野をカバーしているかを基準に選んでください。
出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html
職場の「お下がり」をそのまま使わない
先輩から譲り受けた教材は、コスト面では魅力的です。ただし合格した年が数年前であれば、制度の記述が現行と異なる可能性が高くなります。
参考として目を通す分には有用ですが、メイン教材として据えるのは避けたほうが無難です。年1回しか受験機会がない試験で、古い情報を覚え直すコストは大きすぎます。
教材を「使い切る」ための独学の進め方
良い教材を選んでも、使い方を誤れば結果は出ません。3種類の教材をどう回すかを整理します。
基本テキストは通読しようとしない
分量の多いテキストを最初から順に読み進める方法は、多くの場合途中で挫折します。特に働きながら学ぶ人にとっては現実的ではありません。
有効なのは、過去問を起点に逆引きする使い方です。問題を解き、間違えた箇所や根拠が曖昧な箇所をテキストで確認する。この往復を繰り返すほうが、記憶の定着率も高くなります。テキストは読むものではなく、引くものと考えてください。
介護支援分野から着手する
学習の順序では、介護支援分野を優先してください。介護保険制度の仕組みそのものが問われる領域で、実務で日常的に扱っていない条文や手続きが出題されます。現場経験だけでは埋まらない知識が多い分野です。
さらにこの分野は保健医療福祉サービス分野より問題数が少ないため、1問あたりの重みが相対的に大きくなります。数問の取りこぼしが基準割れに直結する構造であり、直前期に詰め込む対象にすべきではありません。
過去問は「分野別の得点」で記録する
演習の記録は、総合点ではなく分野ごとに残してください。総合点だけを追うと、片方の分野の弱さが見えなくなります。
目標は、複数年分の過去問で両分野とも安定して7割以上を確保できる状態です。合格基準は難易度によって補正されますが、7割を安定して超えられていれば補正がどちらに動いても対応できます。なお直近の第28回の合格率は25.6%、前年の第27回は32.1%と年による振れが大きいため、余裕を持った水準を目標に据えることが重要です。
出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html
ケアマネの独学テキストについてよくある質問
教材選びで迷いやすい点をまとめました。
テキストは何冊必要ですか?
メインとなるテキスト1冊、過去問、制度改正を確認する一次情報の3種類で足ります。同種のテキストを複数買うと情報が分散し、理解度の把握も難しくなります。
基本テキストは独学者も買うべきですか?
必須ではありませんが、出題基準に準拠した構成とされているため、根拠を確認する原典として有用です。通読ではなく、疑問が出たときに引く使い方が現実的です。
過去問はどこで手に入りますか?
試験問題や正答番号、合格基準は都道府県が公表しています。たとえば東京都は試験問題をPDFで公開しており、本番と同じ形式で解けます。
古い年度のテキストでも大丈夫ですか?
おすすめしません。介護保険制度は改正が続いており、旧版の記述が現行と食い違う可能性があります。基本テキストも改訂が重ねられ、十訂版は令和6年6月発行です。
自分の職種に近い分野だけ勉強すればよいですか?
いけません。介護支援分野と保健医療福祉サービス分野それぞれで基準点を超える必要があり、片方を得意分野で補えません。むしろ専門外の領域に時間を配分すべきです。
独学だけで合格できますか?
第28回だけで12,961人が合格しています。ただし合格率は25.6%で、年によっては10%台まで下がります。独学かどうかより、両分野で安定して基準を超える状態をつくれるかが分かれ目です。
ケアマネの独学テキストについてのまとめ
ケアマネ試験の教材選びは、「読みやすさ」ではなく「出題基準への準拠」を基準にしてください。問題も合格基準も全国共通で、2つの分野それぞれで基準点を超える必要があるため、網羅性の欠けた教材はリスクになります。揃えるべきはメインテキスト・過去問・制度改正の一次情報の3種類です。過去問を起点にテキストを引く使い方に切り替えると、限られた時間でも定着が進みます。備も含めた逆算が欠かせません。

