ケアマネの更新研修が廃止に。それでも「研修ゼロ」にならない理由
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
ケアマネジャーの資格更新制と、更新のための研修の廃止が正式に決まりました。2026年6月25日に公布された法律で、介護支援専門員証の有効期間そのものがなくなります。ただし「研修がすべてなくなる」わけではなく、代わりに研修受講が法律上の義務となり、受けない場合の業務禁止規定まで置かれました。何が廃止され、何が残り、いつから変わるのかを条文ベースで整理します。
ケアマネの更新研修は法律で廃止が確定した
まず事実関係を確定させます。廃止は検討段階の話ではなく、すでに公布された法律に明記された内容です。根拠となる法律と、廃止される対象の範囲を条文単位で確認します。
| 項目 | 現行制度 | 改正後 |
| 介護支援専門員証の有効期間 | 5年 | 廃止(期限なし) |
| 更新のための研修 | 受講が必要 | 廃止 |
| 研修を受けない場合 | 期限到来で資格が失効 | 受講命令 → 1年以内の業務禁止 |
| 研修受講の位置づけ | 更新の要件 | 法律上の義務 |
| 事業者の役割 | 規定なし | 受講機会の確保義務・報告義務 |
根拠は令和8年法律第51号
廃止を定めたのは「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)です。この法律は2026年6月25日に公布され、厚生労働省から都道府県・市町村に対して公布通知が出されています。
通知では、介護保険法の改正内容として「介護支援専門員の資格に係る更新制の廃止、研修の見直し等に関する事項」が明記されています。審議会での議論や報道ベースの情報ではなく、法律として成立した確定事項である点がこれまでとの決定的な違いです。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
廃止されるのは「有効期間」と「更新のための研修」
条文レベルで廃止されるのは2つです。ひとつは介護支援専門員証の有効期間そのもの。もうひとつは、その交付または有効期間の更新を受けるために受講することとされていた研修です。改正前の介護保険法第69条の7第2項・第3項、および第69条の8に関する部分が対象とされています。
つまり、5年という期限が消え、「期限までに研修を修了しないと資格が失効する」という構造自体がなくなります。更新手続きのために有給を調整し、数十時間の研修日程を確保していた負担は、この点に関しては解消されることになります。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
「廃止決定」と「施行」は別物
ここを混同すると実務で事故が起きます。法律は公布されましたが、更新制廃止の部分は公布と同時には施行されません。
この法律の施行期日は原則として令和9年(2027年)4月1日です。ただし介護支援専門員の更新制廃止・研修見直しに関する部分は、公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内において政令で定める日から施行するとされています。公布日が2026年6月25日ですので、遅くとも2027年12月下旬までには施行されますが、具体的な日付は政令が出るまで確定しません。
| 段階 | 時期 | 状況 |
| 公布 | 2026年6月25日 | 廃止が法律として確定(完了) |
| 公布〜施行日 | 2026年6月〜施行日 | 現行の更新制がそのまま有効 |
| 施行 | 公布から1年6か月以内の政令で定める日 | 有効期間・更新研修が廃止、研修義務が開始 |
| 期限の上限 | 2027年12月下旬 | この日までには必ず施行される |
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
なぜ廃止されたのか:現行の更新制が抱えていた負担
廃止の背景を理解しておくと、今後の制度設計の方向性も読み取りやすくなります。現行制度でどれだけの時間が求められていたのか、そして失効がどんな結果を招いていたのかを確認します。
更新のたびに数十時間の研修が必要だった
現行制度では、介護支援専門員証の有効期間は5年で、更新のたびに指定された研修を修了する必要がありました。研修時間は都道府県が定めていますが、たとえば千葉県では、専門研修課程Ⅰが56時間以上、専門研修課程Ⅱが32時間以上、実務未経験者向けの更新研修が54時間以上と案内されています。実務経験者向けの更新研修についても、宮崎県では初回更新で88時間以上、2回目以降で32時間以上とされています。
| 研修の種類 | 時間数 |
| 専門研修課程Ⅰ | 56時間以上 |
| 専門研修課程Ⅱ | 32時間以上 |
| 更新研修(実務未経験者) | 54時間以上 |
| 更新研修(実務経験者・初回更新) | 88時間以上 |
| 更新研修(実務経験者・2回目以降) | 32時間以上 |
平日日中に開催されることが多く、受講料も自己負担となるケースがあります。現場で利用者を担当しながら数十時間を捻出する負担が、長年にわたって課題として指摘されてきました。
出典:千葉県「介護支援専門員(ケアマネジャー)の研修について」https://www.pref.chiba.lg.jp/koufuku/kaigohoken/senmonin/kaigoshien/koushinkensyu.html / 宮崎県「介護支援専門員の各種法定研修について」https://www.pref.miyazaki.lg.jp/choju/kurashi/koresha/caremana_training.html
期限を過ぎれば働けなくなる仕組みだった
更新制の最大の問題は、研修を受けられなかった時点で資格が失効し、ケアマネとして業務ができなくなる点にありました。出産・育児や家族の介護、病気療養などで研修日程を確保できなかった人が、能力とは無関係に現場を離れる結果になっていました。
有効期間という「期限」と研修受講が直結していたため、専門職としての資質向上という本来の目的よりも、期限管理そのものが目的化しているという指摘もありました。
人材確保の観点からの見直し
厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会において、ケアマネジャーの資格要件や業務のあり方とあわせて、更新制・法定研修の見直しを論点として提示しました。担い手の確保と定着を図る観点から、更新制の廃止と研修体系の再設計が検討され、今回の法改正に至っています。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2 地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf
廃止後も研修はなくならない。むしろ「法律上の義務」になる
ここが今回の改正でもっとも誤解されやすい部分です。更新制が廃止される代わりに、研修受講そのものが法律上の義務として位置づけられ、履行を確保する仕組みが新設されました。
都道府県知事が行う研修の受講が義務に
改正後の介護保険法では、厚生労働省令で定める者を除く介護支援専門員は、その資質の保持および向上を図るため、都道府県知事が行う研修として厚生労働省令で定めるものを受けるものとされました(第69条の34第4項関係)。
「更新のために受ける研修」から「専門職として定期的に受ける研修」へと位置づけが変わった形です。研修の具体的な科目や時間数、対象から除かれる者の範囲は、今後定められる厚生労働省令で決まります。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
受けない場合は受講命令、従わなければ業務禁止
義務化にあわせて、履行を確保する規定も置かれました。都道府県知事は、登録を受けている介護支援専門員が正当な理由なく研修を受けていないと認めるときは、研修を受けるよう命ずることができます(第69条の38第5項関係)。
さらに、その命令に従わない場合には、1年以内の期間を定めて、介護支援専門員として業務を行うことを禁止することができるとされています(同条第6項関係)。資格が即座に失効する更新制と比べれば段階的ですが、研修を受けなくてよくなるわけではない点は明確です。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
事業者側にも受講機会を確保する義務が課される
見落とされがちですが、今回の改正は事業者にも義務を課しています。条例により介護支援専門員を置かなければならないとされている事業者・施設の開設者は、ケアマネを業務に従事させたとき、または従事しなくなったときに、氏名等を都道府県知事に報告しなければなりません(第69条の40第1項関係)。
加えて、雇用しているケアマネの資質の保持・向上のため、研修の受講機会を確保する措置をとらなければならないとされました(同条第2項関係)。報告や措置を行っていないと認められる場合は勧告の対象となり、期限内に従わなければその旨を公表することができるとされています(同条第3項・第4項関係)。「研修に行かせてもらえない」という状況を制度側から解消しようとする設計です。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
いま更新時期を迎える人が取るべき行動
制度が変わると分かった以上、目の前の更新をどうするかが実務的な悩みになります。施行日との関係で、判断を誤ると資格を失うリスクがあるため注意が必要です。
施行日までは現行制度がそのまま続く
もっとも重要なのは、政令で定める施行日を迎えるまで、現行の更新制がそのまま有効だという点です。「どうせ廃止されるから」と更新研修を見送れば、施行前に有効期間が切れて資格を失うことになります。
自分の介護支援専門員証の有効期間満了日を確認し、それが施行日より前に来るのであれば、これまでどおり更新の手続きを進めるのが安全です。判断に迷う場合は、登録している都道府県の担当課に確認してください。
研修体系そのものの見直しも進む
今回の改正では、更新のための研修を廃止したうえで、都道府県知事が行う研修の受講管理を担う「指定研修受講管理機関」に関する規定も新設されました。都道府県知事は、この機関に受講管理の事務を行わせることができ、受講状況の確認のために必要な指示をすることができるとされています(第69条の33の2関係)。
研修の科目・時間数・受講サイクルといった中身は今後の省令で定まります。受講のしやすさが実際にどこまで改善されるかは、この省令の内容次第です。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
失効した人・ブランクがある人はどうなるか
有効期間が切れて資格が失効している人にとって、有効期間そのものがなくなる改正は復帰のハードルを下げる方向に働きます。ただし、失効者の取り扱いや再登録の手続きがどうなるかは、経過措置を含めて今後示される政省令によります。
現時点で確定しているのは法律上の枠組みまでです。復帰を考えている人は、施行日と経過措置の情報が出た段階で早めに動けるよう、勤務先や求人の状況を並行して調べておくと判断が速くなります。
ケアマネの更新研修の廃止についてよくある質問
条文の読み方や施行時期について、特に問い合わせが多い点をまとめました。
更新研修の廃止はいつからですか?
公布の日(2026年6月25日)から起算して1年6か月を超えない範囲内で、政令で定める日からです。遅くとも2027年12月下旬までには施行されますが、具体的な日付は政令が公布されるまで確定していません。法律全体の原則的な施行日である令和9年4月1日とは別扱いになっている点に注意してください。
もう更新研修を受けなくてよいのですか?
施行日を迎えるまでは現行制度が続くため、有効期間が先に満了する人は従来どおり更新が必要です。見送ると資格が失効します。
廃止後は研修が一切なくなるのですか?
なくなりません。都道府県知事が行う研修を受けることが法律上の義務として新たに定められました。正当な理由なく受けない場合は受講命令の対象となり、命令に従わなければ1年以内の期間を定めて業務を禁止されることがあります。
すでに資格が失効している場合はどうなりますか?
有効期間そのものが廃止されるため、制度全体としては復帰しやすい方向の改正です。ただし失効者の再登録手続きや経過措置の詳細は、今後定められる政省令によります。現時点では確定していません。
主任介護支援専門員の研修も廃止されますか?
今回の法律で廃止が明記されたのは、介護支援専門員証の有効期間と、その交付・更新のために受講することとされていた研修です。主任介護支援専門員に関する研修の取り扱いは、今後の省令等で示される見込みです。
事業所側は何か対応が必要ですか?
必要です。ケアマネを業務に従事させたとき・従事しなくなったときの都道府県知事への報告義務と、研修の受講機会を確保する措置をとる義務が新設されました。対応していないと認められた場合、勧告や公表の対象となる可能性があります。
ケアマネの更新研修の廃止についてのまとめ
ケアマネの更新研修は、令和8年法律第51号によって廃止が確定しました。介護支援専門員証の有効期間そのものがなくなり、期限切れで資格を失う仕組みは終わります。ただし施行は公布から1年6か月以内の政令で定める日で、それまでは現行制度が有効です。廃止後は都道府県知事が行う研修の受講が法律上の義務となり、事業者にも受講機会を確保する義務が課されます。自分の勤務日数を数えるところから始めましょう。

