ケアマネの受験資格の見直しはどこまで決まったか。3年短縮案と5資格追加を解説
監修者

名前 / Name
大石 智之
実績 / Achievements
介護・福祉業界に入り、現場のホームヘルパーとして介護の実務経験を積む。
その後、デイサービスの立ち上げおよび責任者、訪問介護事業所の立ち上げおよび責任者、福祉用具貸与事業所の責任者を歴任。
さらに、居宅介護支援・訪問介護・福祉用具・デイサービスの各事業を統括する責任者として、介護事業の運営・マネジメントに携わる。
約7年間の勤務を経て独立し、居宅介護支援事業と福祉用具事業を柱として株式会社ログを設立。
設立後は地域に根ざした介護・福祉サービスの展開を進め、現在は居宅介護支援事業所10事業所を中心に、複数の介護・福祉事業の経営・運営を行っている。
現場の介護職から事業所の立ち上げ、管理・統括、そして経営まで、介護・福祉事業に幅広く携わっている。
ケアマネの受験資格は、これまでにも大きく見直された歴史があります。そしていま、実務経験を5年から3年に短縮する案と、対象資格に5職種を追加する案が検討されています。ただし2026年8月時点で、これらを定める改正省令は公布されていません。決まったことと決まっていないことを、公的資料で切り分けて整理します。
過去に行われた受験資格の見直し
いま議論されている内容を理解するには、過去の見直しを押さえておく必要があります。現在の要件がどうやってできたのかを確認します。
平成30年度から無資格ルートが廃止された
最も大きな見直しは平成30年度(第21回)試験です。それまでは、法定資格を持たない介護職員でも、介護等業務に10年(社会福祉主事任用資格者は5年)従事すれば受験できました。このルートが廃止され、保健・医療・福祉に係る法定資格保有者に限定することを基本に受験要件が見直されました。
経過措置も平成29年度試験で終了しており、現在は無資格からの直接受験はできません。
出典:大阪府「ケアマネ試験の受験要件の変更について」https://www.pref.osaka.lg.jp/o090100/kaigoshien/care/keamanesikenhenkou.html
受験者数は3分の1近くまで減少した
この見直しがどれほど大きかったかは、受験者数に表れています。第20回(平成29年度)の受験者数131,560人に対し、第21回(平成30年度)は49,332人でした。
合格率も第20回の21.5%から第21回は10.1%へと下がり、28回の試験のなかで最低を記録しています。受験資格を絞ったからといって合格しやすくなるわけではない、という事実がここに示されています。
出典:厚生労働省「第28回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況について」https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000187425_00013.html
証明書の提出も必須要件になった
同じ見直しで、手続き面も変わりました。平成30年度試験からは、それまで実務経験証明書の提出が免除されていた人も含め、提出が必須要件となっています。
「前に受けたときは不要だった」という前提は通用しません。過去に省略受験の対象だった人ほど、現在の要件を改めて確認する必要があります。
出典:大阪府「ケアマネ試験の受験要件の変更について」https://www.pref.osaka.lg.jp/o090100/kaigoshien/care/keamanesikenhenkou.html
現行の受験資格の内容
見直し後の現在の要件を確認します。これが変更の議論の出発点になります。
対象は22の法定資格に基づく業務
現在の受験資格の対象は、介護保険法施行規則第113条の2で定められています。医師、歯科医師、薬剤師、保健師、助産師、看護師、准看護師、理学療法士、作業療法士、社会福祉士、介護福祉士、視能訓練士、義肢装具士、歯科衛生士、言語聴覚士、あん摩マッサージ指圧師、はり師、きゅう師、柔道整復師、栄養士、管理栄養士、精神保健福祉士の22資格です。
資格を持っているだけでは足りず、その資格に基づく業務に従事した期間が求められます。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2 地域包括ケアシステムの深化(相談支援の在り方)」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf
相談援助業務も対象になる
法定資格を持たない場合でも、指定された相談援助業務に従事していれば対象になります。厚生労働省の資料では、介護老人福祉施設等の生活相談員、介護老人保健施設の支援相談員、障害者総合支援法に基づく相談支援専門員、生活困窮者自立支援法に基づく主任相談支援員が示されています。
いずれのルートでも、通算して5年以上かつ従事日数900日以上という実務経験が必要です。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf
解答免除は既に廃止されている
見直しの歴史として押さえておきたいのが、解答免除の廃止です。かつては法定資格保有者に対して一部の解答が免除される仕組みがありましたが、平成27年度に廃止されました。
現在はどの資格から受験しても全60問を解答します。「看護師なら一部免除される」といった情報は過去の制度であり、現在は当てはまりません。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf
いま検討されている見直しの中身
ここからが本題です。厚生労働省が審議会に示した見直しの方向性を確認します。
対象資格に5職種を追加する案
厚生労働省は社会保障審議会介護保険部会に対し、多様な背景を持つ人材の参入を促す観点から、受験対象となる国家資格の範囲を広げる案を示しました。具体的に挙げられているのは、診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師の5職種です。
在宅で検査や機器操作にあたる機会が増えていること、養成課程で地域包括ケアシステムを学ぶことなどが理由として整理されています。現時点では対象外のため、これらの資格しか持たない人は現行制度では受験できません。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf
実務経験を5年から3年に短縮する案
もう一つが年数の短縮です。同じ資料では、現行の5年という実務経験年数について、介護福祉士の実務経験ルートで求められる年数を踏まえて3年に見直す方向性が示されています。
実現すれば、20代・30代のうちにケアマネを目指す道が現実的になります。介護福祉士の資格を取得してから3年で受験資格が得られる計算になり、キャリアの選択肢が前倒しになります。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf
更新制の廃止は既に法律で決まった
見直しの流れのなかで、受験資格と混同されやすいのが更新制の廃止です。こちらは2026年6月25日に公布された「社会福祉法等の一部を改正する法律」(令和8年法律第51号)で、介護支援専門員証の有効期間と、その交付・更新のために受講することとされていた研修の廃止が定められました。
ただし施行は公布の日から起算して1年6か月を超えない範囲内で政令が定める日とされており、それまでは現行の更新制が有効です。これは資格を取得したあとの話であり、受験資格そのものとは別の議論である点に注意してください。
出典:厚生労働省「社会福祉法等の一部を改正する法律の公布について(介護保険最新情報Vol.1518)」
https://www.mhlw.go.jp/content/001715668.pdf
見直しを待つべきか、今受けるべきか
方向性が示されている以上、判断に迷う人は多いはずです。制度の仕組みから、現実的な結論を導きます。
受験資格は「省令」で定められている
判断の前提として重要なのが、ルールの置き場所です。更新制の廃止は法律に書き込まれましたが、受験資格の年数や対象資格は厚生労働省令(介護保険法施行規則)で定められています。
2026年8月時点で、実務経験を3年に短縮する改正省令も、5資格を追加する改正省令も公布されていません。つまり現時点では、検討の方向性が示された段階にとどまります。
出典:厚生労働省「社会保障審議会 介護保険部会(第127回)資料2」https://www.mhlw.go.jp/content/12300000/001586130.pdf
「待つ」判断には時間のリスクがある
省令の公布時期や経過措置の内容は確定していません。「3年になるまで待とう」と判断した場合、施行が想定より後ろ倒しになれば、その間ずっと足踏みすることになります。
ケアマネ試験は年1回しか実施されません。第29回は2026年10月11日実施で申込はすでに終了しており、次は2027年の第30回です。1年の遅れがそのまま1回分の受験機会の損失になります。
出典:大阪府「第29回大阪府介護支援専門員実務研修受講試験のお知らせ」https://www.pref.osaka.lg.jp/o090100/kaigoshien/care/shiken03.html
現行要件を満たすなら早く動くほうが確実
すでに5年・900日を満たしている、あるいは来年度中に満たせる見込みがあるなら、現行要件で受験するほうが確実です。緩和は「今受けられない人にとっての朗報」であって、「今受けられる人が待つ理由」ではありません。
一方、5資格の追加を待つしかない人や、実務経験が3年前後の人は、続報を追う必要があります。省令の公布や経過措置の内容が示された段階ですぐ動けるよう、実務経験の記録と勤務歴の整理だけは先に済ませておくのが賢明です。
ケアマネの受験資格の見直しについてよくある質問
決まったことと決まっていないことを整理しました。
受験資格の実務経験は3年になりましたか?
なっていません。厚生労働省が審議会に見直しの方向性として示した段階で、2026年8月時点で改正省令は公布されていません。現行は5年以上かつ900日以上です。
追加が検討されている資格は何ですか?
診療放射線技師、臨床検査技師、臨床工学技士、救急救命士、公認心理師の5職種です。現時点では受験対象に含まれていません。
いつから新しい要件になりますか?
確定していません。受験資格の年数や対象資格は厚生労働省令で定められており、改正省令が公布されるまで施行時期は決まりません。
更新制の廃止と受験資格の見直しは同じ話ですか?
別の話です。更新制の廃止は令和8年法律第51号で決まりましたが、受験資格の見直しは省令事項で、まだ公布されていません。
過去にはどんな見直しがありましたか?
平成30年度(第21回)試験から、介護等業務10年のルートが廃止され、法定資格保有者に限定することを基本に見直されました。また平成27年度には法定資格保有者への解答免除が廃止されています。
見直しを待ったほうが得ですか?
現行要件を満たしているなら待つ理由はありません。試験は年1回のみで、省令の公布時期も未定です。待つ判断には受験機会を失うリスクがあります。
ケアマネの受験資格の見直しについてのまとめ
ケアマネの受験資格は、平成30年度に無資格ルートが廃止され、法定資格保有者を基本とする形に見直されました。現在は実務経験を5年から3年に短縮する案と、5職種を追加する案が検討されています。ただし2026年8月時点で改正省令は公布されておらず、施行時期も未定です。現行要件を満たしているなら、待たずに受験するほうが確実です。分の勤務日数を数えるところから始めましょう。

